たった5年で部員ほぼ5倍…東北から全国へ“急成長” 専門家感心「口だけでなく実践」

青森・八戸ベースボールクラブのミーティングの様子【写真:チーム提供】

2019年創設の青森・八戸ベースボールクラブは「ラプソード」や肩肘検診も導入

いつまでも気合や根性のみに頼っていては、子どもたちは育たない。学童野球でも、理論的な指導が求められている。野球育成技術向上プログラム「TURNING POINT」が5日、全国の少年野球チームの運営方針や練習メニューを紹介するオンラインイベント「少年野球フェスティバル」を開催。「子どもファースト」を掲げ、成長を続けるチームの秘訣に迫った。

5夜連続で開催している「少年野球フェスティバル」の3日目は、全国制覇経験のある福島・小名浜少年野球教室、石川・中条ブルーインパルスや、五輪日本代表経験のある監督が率いる神奈川・平戸イーグルスなど、全国11チームが登場。映像でそれぞれの練習の特色を紹介した。

2019年に設立した青森・八戸ベースボールクラブは、2023年に高円宮賜杯全日本学童軟式野球大会マクドナルド・トーナメント初出場。当初は15人だった部員数は、創部5年で70人にまで達した。

飛躍の要因は、最新の分析機器を取り入れた練習にある。プロでも導入されている「ラプソード」で子どもたちの投球動作や打撃スイングを数値化。動画とともに可視化することで、技術やモチベーションの向上に役立てている。

これにはゲストコメンテーターとして出演した滋賀・多賀少年野球クラブの辻正人監督も「近代的ですよね」と目を丸くした。さらには月に1度のメンタルトレーニングで、ここ一番での精神面を強化。定期的に肩肘を中心としたメディカルチェックも行われるなど、技術面だけではなく、子どもたちの心や体の発育もサポートしている。

八戸ベースボールクラブの動作解析の様子【写真:チーム提供】

綱引きを練習に導入…楽しみながら“パワーポジション”を確認

辻監督と同じくゲストコメンテーターを務めた野球講演家の年中夢球さんも「子どものことを考えているというのを、口だけではなくて実践しているチーム。小学生は何が良くて何が悪いか違いがわからなかったりするので、動画を見て、ある程度自分のバッティングを知っておく必要があります。すごくいい取り組みだなと思います」と絶賛。この日登場した11チームの中での最優秀チームに選出していた。

遊びの中で野球の動きを確認させるチームもある。2021年に設立した大阪・箕面市の大阪オールスターズJr.は「野球は最高の『遊び』だ!」を掲げ、部員88人を指導している。チームで行う綱引きでは、楽しみながら体全体を使った力の出し方を確認でき、団結力もアップ。「10点を取られても11点を取りに行く」超攻撃野球を生み出す源となっている。

年中夢球さんは食い入るように映像を視聴。「パワーポジションの確認だと思うんですけど、人間が一番力が入るのは綱引きをする位置なので、それが楽しみながら身を持って体験できているのが素晴らしいですよね」と関心を寄せていた。

歴史が浅い新興チームでも、取り組み次第で部員は集まってくる。指導者が型にとらわれず、新旧をうまく融合させながら楽しく練習することで、子どもたちの個性は着実に伸びていく。(内田勝治 / Katsuharu Uchida)

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