安くておいしいコメ「取り合い」に…去年の猛暑とインバウンド需要で価格高騰 コメ農家も危機感

私たちの食卓に欠かせないコメが今、値上がりが続いていて、卸業者の間では、安くておいしいコメを求めて「取り合い」になっているほどだといいます。何が起きているのでしょうか?

中野商店・中野博正社長「通常なら本当にここいっぱいいっぱいで、やっとフォークリフトが入れるくらいなんですが、ガラガラという状況で」

福島県喜多方市でコメの卸を手がける中野商店は、今、異例の事態が起きているといいます。去年、全国を襲った記録的猛暑の高温障害の影響などで、県内でも一等米の流通量が大きく減少しました。そうした中、インバウンドなどでコメの需要が増えたことで、いま価格が高騰しています。

中野社長「(去年コメの)収量が少なかったということで、最近では、あり得ないんですけど、コメ店から問い合わせが来て、大変な状況で」

安くておいしいコメ「取り合い」に…

コシヒカリの玄米価格は、去年秋の時点では60キロあたり、およそ1万5000円。しかし、徐々に価格は高騰し、今はおよそ2万5000円まで上がっていて、卸業者は「安くておいしいコメ」を常に探している状態だといいます。

中野社長「取り合いですね、やっぱり。自分の仕事がなくなっちゃうわけですから」

こちらでは、秋に仕入れの大半を行っているため、価格自体に大きな影響は出ていないということですが、問い合わせなどの対応に追われているといいます。

中野社長「値段が上がったりすると、人間の心理は買っておかなくちゃとなりますので、それは大丈夫です。(店頭から)無くなるということは絶対ありませんので、安心して通常通りの量を買っていただきたいと思います」

ボリュームが売りの弁当店は…

ボリューム満点のお弁当が人気の郡山市の「よくばり弁当ミート君」。会津産にこだわったご飯は普通盛りで300グラム、コメの価格高騰は「死活問題」になりかねませんが…。

よくばり弁当ミート君・山浦昇店長「お客様にたくさん食べてもらえるよういろいろ工夫している。なるべく大量に単価を下げて用意している」

コメを契約農家から一度に大量に買い付けることで単価を下げることができ、直近の価格高騰の影響も受けずに済んでいるということです。一方、コメ以外の材料の価格も高騰が続いていますが、弁当の価格は当面、据え置く予定だということです。

山浦店長「店名によくばりと入っているので、名前負けしないような豪快な盛りをさせていただく」

「コメ農家をする人がいなくなってしまう」農家も危機感

コメの価格が上がる中、郡山市のコメ農家・関根涼さんは「小売店の販売価格が上がっているからといって、コメ農家が潤うわけではない」と話しています。

その理由が、コメ作りに使う燃料や肥料などの高騰です。JA全農福島によりますと、いま流通しているコメは去年作付けされたもので、その時に使われた肥料の価格は、前年と比べると7割も高騰していたといいます。

そして、コンバインの燃料として使う軽油についても、去年9月は1リットル当たり県内の平均価格は167.7円でしたが、3年前の同じ時期と比べると、およそ50円も値上がりしていて、農家にとっては大きな打撃となっています。

これだけ生産にかかるコストが上がると、価格転嫁が必要となり、関根さんはコメ30キロ当たりで前の年からおよそ500円値上げしました。消費者から見ると大きな値上げに感じますが、これでもコストの高騰分をカバーしきれるものではないということです。本来はもっと値上げをしたい一方で、そうすると売れなくなってしまうというジレンマがあると頭を悩ませていました。

関根さんは、このままの状況が続けば「コメ農家をする人がいなくなってしまう」と強い危機感を抱いていました。私たちがおいしいコメを食べ続けるためにも、農家への様々な支援が必要となってきます。



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