廃棄羽毛布団を寝袋に 七尾の寝具店、旅館から回収 避難先に運びやすく、低体温症防ぐ 

羽毛布団を再利用して作った寝袋を手にする中川さん=七尾市内

 被災者が避難先で快適に過ごせるように、七尾市小丸山台の寝具店「スリープイン」が廃棄予定の羽毛布団を回収し、寝袋に作り替える取り組みを進めている。能登半島地震では一部の避難所で毛布が不足したほか、冬場は低体温症による災害関連死も懸念される。携帯性や保温性に優れた寝袋は近年、防災グッズとしての注目が高まっており、店は「再び災害が起きた時、犠牲者を少しでも減らしたい」としている。

 店主の中川裕介さん(48)は震災後、多くの常連客から「避難所で布団がもらえなくて、とても寒かった」と過酷な避難所生活の実情を聞き、使わなくなった羽毛布団を広く集め、寝袋に再利用することを思い立った。

 羽毛布団は中身を取り出して洗浄した後、寝袋に詰めて仕上げる。同店によると、羽毛が入った寝袋はポリエステルなどの化学繊維入りに比べて保温性が高い。リサイクルの寝袋は市販より安価で販売する。

 店では和倉温泉の旅館などの羽毛布団約200枚を回収しており、受注があれば寝袋に作り直す。震災で旅館の休業が続く温泉街の復興に役立てるため、売り上げの一部を和倉温泉観光協会に寄付する。

 能登半島地震では店の駐車場に段差ができるなどの被害があったが、1月5日に営業を再開した。中川さんは、質のいい睡眠法を指導する「上級睡眠健康指導士」の資格を持っており、「寝袋はコンパクトにたためるので車などに常備できる。温かく快適な環境で眠ることは災害関連死の予防にもつながる」と話した。

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