「産学連携×観光DX」のアートクルーズ実施 天王洲キャナルフェス2024春夏に2万人、天王洲・キャナルサイド活性化協議会

天王洲・キャナルサイド活性化協会(東京都品川区、三宅康之代表理事)は5月31日~6月2日、運河とアートのイベント「天王洲キャナルフェス2024春夏」を天王洲キャナルイースト、天王洲運河、アイルしながわ(旧東品川清掃作業所)で開いた。産学連携×観光DXによるアートクルーズ、toshiki soejimaの船上ライブ、人気芸人のお笑いライブ、「ゴーストバスターズ」の屋外上映などを実施し、3日間で約2万人が来場。イベントを通じて、天王洲エリアの活性化や文化観光地域づくりに寄与する。

天王洲キャナルフェスは年に2回、天王洲エリアの活性化や地域住民のコミュニケーションの場の提供を目的に定期開催している地域イベント。同協会は、品川区を核とした多様な関係者と連携しながら、天王洲の水辺空間を活用したにぎわい創出と、魅力ある文化体験の創出を行うことで、文化観光地域づくりを促進している。

会場の一つである「アイルしながわ」## 学生&デジタルがガイダンスを行うアートクルーズを運航

6月1、2日は、跡見学園女子大学観光コミュニティ学部篠原ゼミ、パナソニックグループとの産学連携企画として、クラウド型街巡りガイドサービス「Smart Town Walker®」と学生によるツアーガイドを融合したアートクルーズを実施した。天王洲のアートや京浜運河の名所を見ながらレインボーブリッジまで行く周遊クルーズで、乗船料は3,000円(500円クーポン付き)、各日5便(定員40人/便)を運航した。初日は晴天に恵まれて乗船率が80%、曇りのち雨となった2日目の乗船率は40%だった。

アートクルーズは、天王洲の壁画中心としたアート作品を水上から鑑賞したのち、東京港のダイナミックな景色を堪能するツアー。メインガイドを跡見学園女子大学観光コミュニティ学部篠原ゼミ生が担当し、アート作品や東京港の解説を「Smart Town Walker®」の多言語対応(英語・中国語・日本語)されたイベントアバターによる音声・映像付きのガイダンスで案内した。

跡見学園女子大学の学生がメインガイドを担当

乗船料は、ツアーの付加価値向上を考慮して、前回の1,500円から3,000円に変更。高付加価値観光商品としてマネタイズの実証を行い、マーケティング調査も同時に行った。さらに、クーポン(500円)配布による乗船者の消費調査も行い、下船後の回遊状況ついても分析している。

海上からさまざまなアートなど景色を眺望

同協会の三宅理事長は「実証実験の結果、ガイダンスの高付加価値化により3,000円のクルーズ料金でも販売できる可能性が示された。今後は、観光DXによる多言語対応を行い、高付加価値な観光商品に成長させていく予定だ」と話す。また、今後の課題として、事前のPRによる予約者の獲得や当日の来場者へのPR方法への検討を挙げている。

三宅理事長

ツアーガイドを務めた跡見学園女子大学の学生は、「学生が学んだことをアウトプットできる場は貴重だ。前回のイベント時に同企画を行った経験を生かし、パナソニックのガイドシステムがない時間帯における間の取り方には注意した」と話した。一方、課題については、「イベントには海外からのお客様が多く参加されているが、外国語で対応するコンテンツがまだまだ少ない。インバウンド観光がおう盛であり、日本の文化に触れられる商品の開発、提供ができれば」と答えた。

産学連携は、同協会が跡見学園女子大学観光コミュニティ学部篠原ゼミ、パナソニックグループと連携し、品川・天王洲地区で、さまざまな地域からの来街者や、増加が見込まれるインバウンドに向け、観光DXや空間価値向上技術を活用し、地域消費拡大に向けた観光まちづくりに取り組むことを目的としている。これまでに実証実験として、天王洲をモビリティで巡る体験型アートツアーや、遠隔操作案内所「AttendStation®」(キャナルフェスで2022年より実証実験を開始)などを行っている。

モビリティアートツアーの様子

水辺とアートの観光まちづくりを進める品川天王洲地区は、2016年から観光庁はじめ各機関の助成を受けながら実証実験を重ね、その成果として持続可能な地域の未来をつくるために回遊型をベースにした観光ツアーの開発に取り組んでいる。

次回のキャナルフェス秋冬(10月中旬)では、観光DXによる多言語対応や学生ガイドにエンタメ性を加えたクルーズを実施し、さらなる成功を目指す。

イベント会場の一つである「T.Y.HARBOR」

取材 ツーリズムメディアサービス編集部

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