【コラム・天風録】母親大会

 「生命(いのち)を生みだす母親は 生命を育て 生命を守ることをのぞみます」をスローガンに、母親大会は開かれてきた。70年前、第五福竜丸が水爆実験で被曝(ひばく)したビキニ事件がきっかけ。東京の主婦たちによる署名活動が原水爆禁止運動と母親の団結につながった▲第1回は1955年のきょう。再び戦争が起きる不安を募らせるお母さんや戦地で息子を失った母たち2千人が集まった。女性の権利を勝ち取り、子どもの幸福を守ろうと訴えて。翌月にはスイスで世界大会もあった▲これから母となる人や高齢者、若い世代を含めた幅広い運動だ。生活や教育の充実、女性の地位向上の訴えが社会を動かしてきた。憲法や食、ジェンダーなど多彩なテーマの地方大会も開かれる。今月は山口、島根の両県である▲しかし「母親」を巡る社会環境は年々厳しさを増すようだ。女性1人が生涯に産む子どもの数を表す「出生率」は過去最低の1・20に。赤ちゃんの数は政府の推計より早いペースで減る▲生命を育む楽しさや幸せをイメージできる環境がないのに、子どもが増えるはずもない。社会を大きく変える必要がある。女性だけの問題ではない。人には皆、母親がいるのだから。

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