【6月7日付社説】改正道交法/自転車のルール浸透が急務

 自転車は若者をはじめ、多くの人にとって手軽に利用できる身近な存在だ。ただ、使い方を誤れば重大な結果を招くことがある。自転車が歩行者に近い存在ではなく、自動車の仲間であるとの認識を共有し、安全な利用につなげることが大切だ。

 自転車の交通違反に反則金納付を通告できる交通反則切符(青切符)制度の導入を盛り込んだ改正道交法が成立した。青切符対象となる違反行為は115種類程度で、警察は重点対象行為と位置付ける「信号無視」や「指定場所一時不停止」といった違反を中心に取り締まるとしている。

 法改正の背景にあるのは、自転車の絡む死亡・重傷事故のうち、7割超には自転車側に何らかの法令違反があることだ。酒酔い運転や、事故につながる重い違反行為についてはこれまでも、刑事処分の対象となってきた。ただ、今回青切符の対象となった違反行為については処分の方法がなかったこともあり、守るべきルールとして認識されにくかった面があるのは否めない。

 青切符の自転車への適用は、自転車にも安全を確保する義務があるとの意識付けに有効だろう。自転車でしてはいけない違反行為の認知度を高め、自転車、歩行者、自動車がそれぞれ安全に通行できる環境にしていくことが重要だ。

 青切符が適用されるのは、義務教育を終えて、基本的な交通ルールについて最低限の知識があるとみなされる16歳以上となった。小学校などでは学校行事の一環として交通安全教室を開いているところが多いが、その内容はまちまちで、交通ルールの理解度は個人差が大きいとの指摘がある。

 先進国の多くは、学校カリキュラムの中に交通教育を位置付けている。義務教育を終えているとはいえ、運転免許を持っていない人に反則金を科すのであれば、学校などでルールをしっかりと教えることが前提であるべきだ。青切符の適用は公布から2年以内に始まる。国は、自転車のルールを含めた交通教育を行き届かせるための仕組みの整備を急いでほしい。

 改正法では、自動車と同様に酒気帯び運転への罰則も新たに整備された。運転中に手に持った携帯電話で通話したり、画面を注視したりする、ながら運転は原則として青切符の対象だが、交通の危険を生じさせた場合には刑事罰の対象となる。

 違反で反則金や罰金を取られないためではなく、自分や誰かを傷つけないためにこそルールを守ることが求められる。

© 福島民友新聞株式会社