「反省に時効はない」小6女児同級生殺害事件20年 同級生2人、心の中で錯綜する感情

 2004年に佐世保市立大久保小で起きた小6女児同級生殺害事件から20年。かつての同級生は30代になり、それぞれの人生を歩んでいる。20年の月日が流れ、事件に対する彼らの考えに変化はあるのか。2人の同級生に話を聞いた。

加害者の元少女に対し、複雑な心境をのぞかせる同級生2人=長崎県内

■普通の友達
 「人間って、事件のことは忘れちゃいけないけど、忘れていくんですよね」
 同級生の一人、高橋美里さん(31)=仮名=は開口一番、そう切り出した。今は社会人として、職場で責任ある仕事を任され、日々慌ただしく過ごしている。
 高橋さんは「被害少女より加害少女の方とよく遊んでいた」と話す。普通の友達同士だった。だが、「かなり時間がたって、楽しかったかは分からなくなった。(加害少女の)笑っていた姿が思い出せない」。
 加害少女は勉強ができ、小学生があまり読まないような難しい本も読んでいた。「考え方が社会の常識とは違う人だったのか」。それでも「人殺しなんてする? (人を殺してはいけないことは)幼稚園児でも分かる」。厳しい口調で話した。

■心境に変化
 同じく同級生の森田耕平さん(32)は約10年前まで、加害少女に「会ってみたい」と思っていた。しかし、ここ数年、心境に変化が出てきている。
 「会ったところで年月がたちすぎて、まともに会話ができないのでは。20年前のことを聞き返し、当時の感情を聞いたところで、俺にとって何になるのだろう-」
 現在、長崎市で妻と娘と暮らしている。大久保小の同級生と数人で集まることは今でもあるが、事件の話にはならず近況報告ばかりだ。
 被害女児のことは「頭が良くて絵も上手。家庭科も得意で、なんでもできた」と2人は話す。被害者、加害者の間で何があったのかは分からない。「あの2人が仲たがいしているのを見たことがない」と森田さんは振り返る。

■法律に疑問
 「加害少女に対し何を思うか」と2人に問うと、腕を組んだり、頭を抱えたり、悩ましい表情を見せた。
 高橋さんは「幸せに暮らしていたら何とも言えない。でも自分は加害少女に対して何もできないから、『どうでもいい』とも思う。ぶっちゃけ、幸せにならないでほしいという感情もあるけど。悲しい、という感情だけでも足りない。いくら考えても分からないけど、なんであの時-」、感情が心の中で錯綜(さくそう)して、整理がつかない。
 「20代前半までは、『なぜ殺したんだろう』と考えていたけど、今は考えても仕方ないと思うようになった」と森田さん。それでも「反省に時効はない。反省し終えた感じにはなってほしくない」と語気を強めた。
 最後に2人はこう口をそろえた。「今の法律は更生ありき。もっと子どもにも裁きを厳しくすることで、防げる事件があるんじゃないのか」

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