守田・旗手・鎌田のトリオが中央に陣取るメリット。高度な連動性で攻撃的3バックと可変をスムーズに

[W杯予選]日本 5-0 ミャンマー/6月6日/トゥウンナ・スタジアム

すでに2026年北中米ワールドカップのアジア最終予選進出を決めている日本代表にとって、2次予選のミャンマー&シリアと戦う6月シリーズは底上げの場。その一発目となったのが6日のミャンマー戦だ。森保一監督も前日会見で「攻撃的3バック」と「3枚と4枚のスムーズな可変」にトライしていく意向を示していただけに、その成否が大いに注目されていた。

試合前は4バックで始めて、状況に応じて3枚に移行していく形になると思われたが、ふたを開けてみると、選手たちは最初から3バックの立ち位置を取っていた。

「『4で行くか、3で行くか』という話がずっと直前まであって、守備の時、練習で前日にハマらなかったこともあって、3で行きたいと話をした」と守田英正(スポルティング)は説明。彼と旗手玲央(セルティック)がボランチ、鎌田大地(ラツィオ)と堂安律(フライブルク)がシャドーという形でスタートすることになったという。

実際にゲームが始まると、守備時は3-4-2-1がベースだったが、攻撃時は守田がアンカーとして中央を広くカバーし、鎌田と旗手が柔軟に立ち位置を変えながら組み立てに参加したり、前へ出ていくシーンが目についた。

「自分たちがある程度、自由にボールを回せるのは分かっていたし、うまくポジションを変えながらやろうと話していた。僕自身、チームで3バックはよくやっているので、代表に来ても難しくないし、心地良いと感じましたね」と鎌田は作りにもフィニッシュにも参加できる関係性を好意的に受け止めている様子だった。

守田、旗手、鎌田の3人に言えるのは、全員がボールを持てるし、タメを作って試合を落ち着かせられること。それによって周りのメンバーもより安心感を持ってプレーできる。

谷口彰悟(アル・ラーヤン)も「彼らは良い距離感で回せるし、相手の危険なエリアで受けて仕事ができる。ボールを持ちながら敵を揺さぶることができれば、中も生きるし、相手が中を締めてきたら外も使える」と、この3人が中央に陣取るメリットを強調していた。

そうなると、右シャドーに入った堂安は「彼ら3人は作りがうまいんで、好きにゲームを作ってもらって、僕はフィニッシャーとしてゴール前に顔を出せればいい」と割り切れる。実際、34分の2点目のシーンも、鎌田が反転シュートを放つのを予測した堂安がこぼれ球に反応。自身代表通算9点目をマークするに至った。

左ウイングバックの中村敬斗(スタッド・ドゥ・ランス)が前へ前へとドリブルで勝負できたのも、中盤で敵を引き付けて大きなスペースを作ってくれたことがプラスに働いたのだ。

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旗手と鎌田が下がり、川村拓夢(広島)や鈴木唯人(ブレンビー)が入ってきた後半はポジション固定の傾向が強まった。今回は見られなかったが、これまでの代表で何度も共闘してきた遠藤航(リバプール)・守田・田中碧(デュッセルドルフ)の中盤トリオも「3ボランチ」という印象で、そこまで攻撃の迫力は出せないだろう。それを踏まえても、鎌田と旗手が攻撃面でもたらすものは非常に大きいのだ。

もちろん、今回は格下のミャンマーが相手だったため、イランやイラクと対峙した時に同じことができるかは未知数だ。「相手のレベルが今のレベルだったら、分からないことも、たくさんあると思う。もう少し強い相手とやっていくと、より明確になる」と鎌田自身も語っていた。

それでも、中盤で敵を凌駕しつつ、押し込みたい時のオプションとして、彼ら3枚の組み合わせは有効ではないか。

「今回は得点を取れたし、チャンスもそれなりに作れた。3でやった時に起こりうるカウンターや失い方を想定して、それでリカバリーもできたので、全体的に攻守が一体になっていて、そんなにバランスの悪い試合ではなかった。少し停滞した時間帯もあったし、もちろん完璧ではないけど、最初の段階としては良かったんじゃないかなと思います」と、守田も前向きにコメントしていた。

重要なのは、ここからいかに精度を高めていくか、そして選手が変わっても同じような連係・連動を出せるかどうかだ。11日のシリア戦では、遠藤や田中が中盤の軸を担うはず。ミャンマー戦で45分間のプレーにとどまった旗手もピッチに立つかもしれない。その組み合わせで、敵のレベルが上がるなか、阿吽の呼吸を出せるか否かというのは注目すべき点だろう。

攻撃的3バックと可変システムを研ぎ澄ませていくためには、もちろん最終ラインの的確なポジショニングも重要だが、中盤が安定しなければ何も始まらない。今回の前半を1つの指標にしつつ、森保ジャパンとして最適解を見出していくことが肝要だ。

そうやって組織的に戦えるようになれば、伊東純也(スタッド・ドゥ・ランス)や三笘薫(ブライトン)という圧倒的な両翼が不在でも、停滞しない試合運びができるはず。そういった理想形を貪欲に追い求めていくべきである。

取材・文●元川悦子(フリーライター)

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