夜10時過ぎに焦げた臭い…アパートから火が テレビ見ていた隣の一家が初期消火、水道ホースや消火器で被害拡大防ぐ 消防隊の到着前に鎮火、家族3人に感謝状 「何もできなかった」17年前の11棟燃える大火事を教訓に

アパート火災の初期消火に貢献したとして感謝状を贈呈された関根浩一さん(中央)、妻の奈美さん(右)と、市川和幸署長=5月31日午後、春日部消防署

 埼玉県春日部市南4丁目のアパートで今年4月17日に発生した火災の初期消火に貢献したとして、春日部消防署は5月31日、隣家の会社員関根浩一さん(51)、妻の奈美さん(48)、次男の嶺(りょう)さん(22)の3人に感謝状を贈呈した。17年前に近所で発生した大火事の教訓を生かし、冷静に対応して被害の拡大を防いだ。

 火事に気付いたのは午後10時過ぎ、浩一さんは自宅1階でテレビを見ていた。焦げた臭いがしたため外の様子を確認したところ、隣のアパート1階玄関付近から火が出ているのを発見。110番するとともに、嶺さんと共に自宅の水道ホースを使って消火作業に当たり、奈美さんもアパートの消火器を手に加わった。消防隊が駆け付けた頃にはすでに鎮火し、類焼もなかった。

 「アパートに住んでいる方は心配だったが、恐怖心はなかった」と浩一さん。保育士をしている奈美さんも「仕事の防火訓練で消火器の扱いには慣れていた」と振り返る。家族そろって冷静に対応できたのは大火事を経験し、日頃から警戒していたからだ。

 2007年3月、近所で全焼6棟を含む計11棟が燃える大火事が発生した。「気付いた時にはすでに手遅れで、何もできなかった」と浩一さん。その教訓からいち早く異変に気付き、協力して消火活動に当たることができたという。

 この日の贈呈式には浩一さんと奈美さんらが出席。感謝状を手渡した市川和幸署長は「火災は初動の対応が非常に大切。勇敢な行動で被害を未然に防いでいただき、感謝している」とたたえた。

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