日本の人は「美意識は高い」 イギリス暮らしで日本人女性が気づいた、ファッションと身だしなみの違い

思い思いのスタイルで街を歩くイギリス人(写真はイメージ)【写真:Getty Images】

流行に敏感で、日本人はおしゃれに気を使う傾向がありますが、外国ではどうなのでしょうか。そこで、王道のトラッドスタイルやクールなパンクファッションを生んだ、イギリス・ロンドンと比較してみましょう。ひょんなことからイギリスに移住、就職し、海外在住歴7年を超えたMoyoさんが、外国暮らしのリアルを綴るこの連載。30回目は、日本人と英国人の普段のファッションや身だしなみへの意識の違いです。

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ラフな私服を好むロンドンっ子

日本に帰ってくると、道ゆく人々が本当にきれいで清潔な格好をしていると感じます。とくに女性は、どんな年代の人でも本当に見る人見る人、しっかりとお化粧(バッチリと言わなくとも薄づきでもナチュラルでも)をして、上から下までこざっぱりとしたファッションをしていますよね。自分の地元を歩いていても、老若男女、本当にちゃんとした格好をして歩いているなぁと感心してしまうほど。

ロンドンにはありとあらゆる人がいるので、確かに全身をバッチリ決めて颯爽と歩いている人もいます。しかし、近所への買い物やパブで見かけるのは、スポーツブラにレギンス姿で明らかにヨガやジム帰りの人、サイズが合っていないダボダボのシャツにラフなジーンズなど、思い思いのスタイルの人々。

また、ブラジャーを着けていない女性を見かけるのも珍しくないなど、日本人の感覚からしたら目のやり場に困る大胆な格好で歩いている人もちらほらいます。これといったラグジュアリーブランドを持つ人なども見かけることはまれかもしれません(シティセンターなどに行けば別ですが……)。

イギリスの公園にも、いろいろな服装の人がいる【写真:Moyo】

そんな光景に最初はびっくりしていたはずですが、郷に入っては郷に従え。時が流れると意外に慣れてしまうもので、私自身もリップはもちろん眉毛すら描かずにどすっぴんで、スウェットやレギンス、ヨガウェアのブラトップ、タンクトップ一枚などで闊歩するようになってしまったのです。

日本に帰ったときも、ついそのノリで外出したくなってしまうのですが、そんな格好をしている人がまったくいないことに改めて愕然。そして、英国ではコロナ禍以降使っていなかったマスクを、日本ではすっぴん隠しのために思わず着用してしまいます。こうした体に染み込んだ習慣が出てくるのも、日本ならではなのでしょうか。

日本人に比べると、目に見えないところへの美意識が高い

また、日本は一般の人々の美意識がかなり高い気がします。日本にいた頃は、腋はもちろん指毛などの細かなところの1本のムダ毛も許されず、きれいに処理しなければ、というふうによく思っていました。

電車やバスなどの公共交通機関に乗っていると、脱毛や美容の広告などがあちこちにあるので目につきますよね。このような外的要因にも影響を受けて、おそらく無意識に、相手をチェックしていたと思います。

ですが、英国ではナチュラリストの人もいて、腋毛や腕毛などそのまま自然な人もいます。なかでも腕毛の処理は、重要視している人があまりいない様子。色素が薄い人が多いのでそこまで気にならない、ということもありますが、どんな人種でもみんなそれぞれのポリシーがあります。

その代わりに、どの体毛をよく処理しているかと言われれば、やはりアンダーヘア。日本でもだいぶ広まってきたと思いますが、こっちではアンダーヘアの手入れが当たり前です。女性も男性もしっかり手入れをしている人が多い印象があります。

そんな具合で、気にかける人は気にかける、そうでない人はそうでない人、別に他人がどうであろうとどっちでもいいというように。別に個人の自由だしな、と思うようになったのはいうまでもありません。日本以外の国で暮らしてみて、ファッションや美意識のこういった点からもわかるように、いろんな意味で他人の目を気にしない、気にしなくなる、というのは本当なんだなと思いました。

Moyo(モヨ)
新卒採用で日本の出版社に入社するも、心身ともに疲弊し20代後半にノープランで退職。それまでの海外経験は数度の旅行程度だったが、イギリスへ語学留学ののち移住した。そのまま、あれよあれよと7年の月日が経ち、現在はフランスに在住。ライター、エディター、翻訳家、コンサルタントとして活動している。最近ようやくチーズのおいしさに少し目覚める。

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