来年大河『べらぼう』の題字決定、書家・石川九楊氏が手掛ける 副題は「署名風の書体で」

『べらぼう』の題字が決定【写真:(C)NHK】

横浜流星が主人公の“蔦重”こと蔦屋重三郎を演じる

NHKは7日、俳優の横浜流星が主演を務める2025年放送の大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺(つたじゅうえいがのゆめばなし)~』の題字が決定したことを発表。書家の石川九楊(いしかわ・きゅうよう)氏が担当した。

本作は、18世紀半ばの江戸が舞台。江戸のメディア王として時代の寵児(ちょうじ)となった主人公の“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜)を軸にした痛快エンターテインメントとなる。

石川氏は1945年福井県生まれ。台東区在住。京都大法学部卒業。京都精華大教授、文字文明研究所所長を経て、現在、京都精華大名誉教授。「書は筆蝕の芸術である」ことを解き明かし、書の構造と歴史を読み解く。評論家としても活躍し、日本語論、日本文化論は各界にも大きな影響を与える。作品制作・執筆活動、いずれの分野でも最前線の表現と論考を続け、現在までに書作品2000点以上、著書100点以上を世に送り出している。

題字を手掛けた石川氏のコメントは以下の通り。

「べらぼう」を書く 石川九楊

題名が「べらぼう」だと聞いたとき、なかなか含蓄のある憎い命名に舌を巻いた。

語源は江戸時代の見世物小屋の醜貌の畸人・便乱坊(ルビ・べらぼう)。今では転じて痴れ者など負の意味合いが強調されて使われることが多いが、そこには、尋常ならざる、異界の人などの正の意味も重なっている。

ここを見定めて書き始める。「べらぼ」まではすんなりと筆は進むが、「う」の箇所で、「ウッ」と筆が渋る。正書法は「う」だが、実際の発音は限りなく「お」に近い。「べらぼー」と音引きするか、「べらぼお」と口を大きく開いて書き終える誘惑にかられる。「う(U)」と口をすぼめて終る気になれないのだ。そこで行きついたのが、やや口を開いた「う」字。

また副題「蔦重栄華乃夢噺」では、人名「蔦重」が異質。そこでここは違った署名風の書体で書くことにした。ENCOUNT編集部

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