泳いでも泳いでも…水の怖さ実感、ライフジャケット着けていても流され続ける ライン下りで記者、訓練を体験

急流に流される要救助者をボートで救出する訓練=5日午前、長瀞町長瀞

 夏の観光シーズンに水難事故が多発する傾向にあることから、埼玉県の秩父署などは5日、荒川河川の状況把握や救助技術の向上を図る水難救助訓練を長瀞町の荒川で実施した。県警の山岳救助隊などから約30人が参加し、ラフティングボートを使用した操船訓練や救助訓練を行った。記者も訓練を体験取材し、水の怖さを実感した。

 県警によると、県内では過去5年で水難事故が101件発生し、62人が死亡した。うち、7~8月が全体の3割以上を占めている。訓練が行われたのは荒川の急流を和船で下る観光名物「長瀞ラインくだり」が楽しめる場所。夏になると河原ではバーベキューやキャンプをする観光客も増えることから、毎年この時期に訓練を行っている。

■ラッコのように

 訓練では、河川内で水に流された際に安全に浮く姿勢や、スローバッグという救助用のロープを使った救助などを行った。記者もTシャツに長ズボン、スニーカーと、普段の格好のままライフジャケットを着けて訓練の一部を体験。初めに顔は上を向き、足を下流に向けてラッコのようなポーズを取る、水に浮くための基本姿勢を教わった。

 県警山岳救助隊の伊勢谷竜司隊長は「水に近づくときは必ずライフジャケットを着用してほしい」と念を押した。流れが速い場所や底が見えない場所には近づかないことも大切だという。

■浮き上がっても

 訓練の後半には、水深3~4メートルほどある流れが急な場所で水に飛び込み、対岸まで泳ぐ訓練も行った。記者が体験した際には、ライフジャケットを着用していたためすぐに浮き上がることができたが、流れが急だと、思ったような動きができなかった。どんなに泳いでも流され続け、結局ボートに助けてもらった。

 水の怖さと、ライフジャケットのありがたみを実感した訓練だった。伊勢谷隊長は、「ライフジャケットやスローバッグはホームセンターやスポーツ店でも簡単に購入することができる。命を守るためにもライフジャケットを準備していただきたい」と呼びかけた。

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