新たな地域交通担い手に 千葉県内ライドシェア 8日未明開始 「どんな客乗るか楽しみ」 全面解禁に疑問の声も

「ライドシェア」の表示灯を自家用車に取り付ける小久保さん=6日午後、千葉市中央区

 一般の人が自家用車を使い有償で客を運ぶ「日本版ライドシェア」が、8日未明から千葉交通圏(千葉市、四街道市)で始まる。県内ではバスの廃止や減便が相次ぐ中、地域交通の担い手不足の解消に向け期待が高まる一方、タクシー事業者以外の参入を巡っては「タクシーのビジネスモデルを破壊する」として否定的な意見もある。

 国土交通省は配車アプリのデータから算出した「マッチング率」などを基に、県内では千葉交通圏の土曜と日曜の午前0~3時台に、1日当たり計110台を上限に運行を許可した。現在は半数の55台を各事業者に割り当てている。

 国交省千葉運輸支局によると、千葉交通圏では全30事業者のうち、9事業者がライドシェア参入に名乗りを上げた。5日時点で京成タクシー千葉(千葉市中央区)など6事業者が運行の許可を得た。

 同市若葉区のカメラマン、小久保陽一さん(68)は千葉構内タクシー(同市中央区)で8日からライドシェア運転手として働く予定。もともと車の運転が好きでタクシー運転手に興味はあったが、勤務時間の長さなどで難しいと感じていたという。「プロの運転手となるのでプレッシャーは感じるが、どんな客が乗るのか楽しみ」と意気込んだ。

 県内大手の三ツ矢エミタスタクシーHD(同市美浜区)は、ライドシェアの特設求人サイトを開設。200人以上の応募者は個人事業主が多く、ウーバーイーツと掛け持ちの人も。同社の担当者は「第2種免許が要らないなど応募のハードルが下がったのは確か。興味を持つ人は多いと感じる」と話す。タクシーチケットの扱い方や駅への入り方などの研修が不要で、会社にとっても教育が簡素で済むという利点があるという。

 日本版ライドシェアはタクシー事業者が運転手を雇用し研修を実施。乗客は原則、スマートフォンの配車アプリで行き先を予約し、アプリ内で決済しないといけない。

 熊谷俊人知事は5日の定例記者会見で「地域公共交通の担い手が新たに生まれる」と期待。「利用実態や効果を検証し、利用者や事業者の声を丁寧に聞いてより良いものにしてもらいたい」と述べた。

◆全面解禁に疑問の声も タクシー会社「ビジネスモデル破壊」

 多くのタクシー事業者は時間帯や場所を限定して運転手不足を補う「日本版」であれば共存可能として、ライドシェア参入を決めた。米ウーバーなどが参入するライドシェアの全面解禁の動きに県内のタクシー事業者からは「稼げる場所や時間帯だけ動く運転手に地域の足を担えるのか」と疑問の声が上がっている。

 県タクシー協会によると、県内ではコロナ禍で運転手が大幅に減少したが、昨年3月を境に運転手の数は増加している。現在も運転手の積極的な確保や不足時間帯へのタクシーの充てんなどの対策を進めており、同協会は「ライドシェア導入のそもそもの目的だった運転手不足解消には向かっているはずだ」とする。

 第2種免許の取得が必須な通常の運転手は、駅での待機など「もうからない」業務もこなすことで地域の足を担ってきた。一方でライドシェアは需給のみで動くため、稼げる場所や時間に集中することが予想され、タクシー事業者は「いいとこ取り」されることを危惧している。あるタクシー事業者は「運転手を辞める人や廃業する会社も出てくるかもしれない」と話す。

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