イタリア・テニス界強化に取り組んできた連盟会長がシナーの世界1位確定に歓喜!「私たちのムーブメントを誇りに満ち溢れさせた」<SMASH>

現在開催中のテニス四大大会「全仏オープン」男子シングルスで準決勝に進出しているヤニック・シナー(イタリア/世界2位)は、大会後の6月10日に更新される世界ランキングでトップにつくことが確定している。グレゴリー・ディミトロフ(ブルガリア/同10位)との準々決勝の試合中に、前回覇者で世界1位のノバク・ジョコビッチ(セルビア)が準々決勝を棄権すると発表したタイミングで、王座交代が決まっていた。イタリア人としては男女を通じて初の快挙である。

この偉業を受け、イタリア・テニス連盟のアンジェロ・ビナーギ会長は若き王者を絶賛。と同時に、母国のテニス界全体が果たした変革に胸を張った。

「この信じられないような歴史的な偉業は、価値あるスタッフに囲まれた、並外れた男の功績です。ヤニックの背後には、22歳という若さでこのような結果を出すに至った豊かな価値観を与えてくれたファミリーがいる。イタリア人が世界の頂点に立つことは、私たちのムーブメントを誇りに満ち溢れさせ、この長い期間、私とともにイタリア・テニスの再出発とその後の成功のために情熱的に人生を捧げてきたすべての人々を充実した気持ちにさせてくれます」

ビナーギ会長が強調したように、近年のイタリア・テニス界の躍進は目覚ましい。全仏オープン直前のランキングでは、トップ100に9人ものイタリア人が名を連ねた。これは11名が入ったフランスやアメリカといったテニス大国に次ぐ勢力。シナーが台頭した背景には、イタリア全体の強化があったというわけだ。
以前、弊ウェブサイトでも報じたように、イタリア連盟は2015年にジュニア育成体制の改革に着手。連盟「主導」型を改めて、選手やコーチへの「協力・支援」型へと転換した。また、有望ジュニアがテニスを続けていくため、選手と家族の精神的、肉体的、そして経済的負担を軽減するべく、寮付きの強化センターを増設したり、寮費や移動費など必要な経費を連盟がサポートするなどしてきた。

一方で、国内開催のチャレンジャー大会を増やして、若手選手がポイントを稼いだり、レベルアップしやすい環境整備も進めてきた。ミラノで開催されていた「ネクスト・ジェン・ファイナルズ」(21歳以下の上位選手によるシーズン最終戦)で、開催地特権によりワイルドカードを得たシナーが優勝したことは、環境整備のひとつの成果だったと言えるだろう。

より広く見れば、伝統ある「イタリア国際」(ATP1000)に加えて、2021年から25年まで「ATPファイナルズ」を招致したことは、国内でのテニス人気向上に貢献し、強化の下支えとなっていくはずだ。

そんなイタリア勢のなかでも頭ひとつ抜けたシナーは、今季「全豪オープン」で初めてグランドスラム優勝を果たすと、その後も「ABNアムロ・オープン」、「マイアミ・オープン」を制覇。4月1日付けのランキングで自己最高の2位につけていた。「全仏オープン」でも初めてのベスト4に進出しており、現地7日に行なわれる準決勝でカルロス・アルカラス(スペイン/同3位)と対戦する。

構成●スマッシュ編集部

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