「真相が闇に葬られた」事件の重要参考人が飛び降り自殺…警察は不手際を棚に上げて取材中の記者に責任転嫁

30代女性が亡くなった民家(写真・梅基展央)

6月6日、足立区の民家で、住民の30代女性が、服を着たまま水が張られた浴槽に上半身が入る形で死亡しているのが発見された。「娘と連絡が取れない」と女性の父親から交番に連絡があり、警察官が駆けつけて発見されたものだった。

女性は結婚しており、警察は夫を重要参考人として事情聴取した。聴取は6日の深夜にまで及び、夫が警察署を出たのは日付が変わった後だったとみられている。

翌7日、報道各社は事件取材で、夫の実家とみられる埼玉県川口市のマンションに向かった。ある報道関係者は、そのときの様子をこう聞いていた。

「マンション前には民放3社の記者がいたようです。マンションの5階に夫の関係先とみられる部屋があったことから、各社はそれぞれピンポンを押した。でも応答がなく、ここにはだれもいないのかもしれないと思ったようでした」

ところが、12時を過ぎた頃、5階のマンションのドアが開いた。外からその様子が見られることから、記者らは夫の関係者が下りてくるものだと思って待っていたという。

「でも、5階から下りてくるはずの人が下りてこない。そのうち、ドスンというすごい音がしたといいます。直後に女性の叫ぶ声がした。記者らが慌てて現場に向かったところ、5階から出てきた男性が、血を流して横たわっていたといいます」(前出・報道関係者)

現場にいた記者らは手分けをして、救急車や警察へ連絡、マンションにあったAEDを使って処置もしたという。

飛び降り自殺を図ったのは、女性の夫だった。夫はマンションの5階から7階に上がり、そこから飛び降りたとみられている。現場には遺書と靴が並べられていた。夫は7日も聴取を受ける予定だった。

「さすがに記者らも動揺したといいます。事件現場の取材が多くても、目の前で飛び降りを見ることなどまずないでしょうから」(同)

ところが、こうした事態に激怒したのは警視庁捜査1課だったという。ある大手紙記者はこう話す。

「警察は、民放記者がピンポンを押したことで、夫を追い込んだと怒っています。これで真相が闇に葬られたと言っている。もしかしたら報道各社に対して抗議する事態になるかもしれません」

もっとも、前出の報道関係者は、そうした警察の対応には疑問があると話す。

「そもそも警察は、重要参考人である夫の行動をなぜ確認しなかったのか。通常なら、事情聴取の後は、家族らに連絡し、本人を絶対に1人にしないように申し入れたりします。あるいは、警察がホテルを用意して、行動が監視できるようにする場合もある。

今回は、自殺しなくても、どこかに逃亡する恐れもあった。警察は、そんな不手際を棚に上げて、夫の自殺を取材した記者に責任転嫁しているんです」

夫はなぜ自殺したのか。妻はなぜ死亡したのか。事件の真相が葬り去られたというのは、あまりに早計だろう。

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