「“日本の特産”として責任を持つ」駿河湾の宝石・サクラエビ 漁の自主規制で漁獲量が微増【SDGs】

春の漁を終えた駿河湾のサクラエビ。ここ数年不漁が続いていましたが、漁業者の自主規制などが実を結び、少しずつですが回復傾向です。現場はいま、どうなのか。先日、春漁に同行しました。

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<清水英之カメラマン>
「午後6時30分出港です」

5月15日、約1週間ぶりに漁がおこなわれ、60隻ほどの船が静岡県の由比港を出発しました。魚群探知機で漁場を探すこと約1時間。

「いまどの辺ですか」
「(漁場)は富士川の沖です」

サクラエビ漁は2隻が1組となり、網を引きます。網が放たれてから待つこと20分。網に入ったサクラエビをポンプで吸い上げます。

「今いくつくらい?」
「50、いや100杯です」
この日は約120カゴの大漁で、思わず漁師から笑顔がこぼれました。

<第一蛭子丸 古牧圭介船主>
「いつもこのくらい取れるといいね」

1970年代には、春漁だけで漁獲量3000トンを超える年もありました。その後も波はあるものの、15年ほど前までは春漁だけで、漁獲量1000トン以上が当たり前でした。しかし2009年から1000トンを割るようになり、2020年の春漁は25トンほどと激減してしまいました。

<第一蛭子丸 古牧圭介船主>
「不安でした、ずっと不安でした。資源がここしかないサクラエビだもんでね。なくなるっていうのはね、寂しいことで」

そこで、船主で組織する静岡県桜えび漁業組合では、2019年から漁獲量の回復を目的に、大きく分けて2つの自主規制を始めました。

<県桜えび漁業組合 實石正則組合長>
「一つは禁漁区を設けて、そのエリアは操業しないと」

特に産卵する親えびを守るため、産卵場所とされる富士川河口付近での操業を中止しました。

<県桜えび漁業組合 實石正則組合長>
「もう一つは一日の操業隻数を制限して、また網を引く時間も制限しました」

具体的には、120隻60組ある船団を半分に分け、一日30組に制限し漁獲量を抑えてきました。この自主規制が実を結び、少しずつではありますが漁獲量が増え始め、2024年の春漁も2023年を30トン以上、上回っています。

<県桜えび漁業組合 實石正則組合長>
「自主規制は引き続きやっていかなければならないと思っています。これから先ずっとですね。やっぱ持続可能な漁業をしていかなければならないですから」

サクラエビのかき揚げが人気の飲食店です。この日は旬のサクラエビ料理を求め、県外からも多くのお客さんで賑わっていました。一番人気のサクラエビのかき揚げ丼です。

<都内からの客>
「一年に一回来てるので、美味しいですね。美味しいものを食べに来たいのでなるべく頑張って獲っていただきたいと思います」

旬の味を求め、多くの食通が由比を訪れ、町にも活気が戻ってきました。

<県桜えび漁業組合 實石正則組合長>
「大きく言えば、静岡だけの特産じゃないです。日本で水揚げしてるのはここだけです。日本の特産として、我々も責任を持って操業していかなければと思っています」

6月9日の日曜日には「由比桜えびまつり」が由比漁港で行われます。桜えびのかき揚げやしらすの販売などのほか、ステージイベントなども開催予定です。

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