「我々は文化と闘っている」天才ミュージカル作曲家が20周年『オペラ座の怪人』映画化秘話を語る!4Kデジタルリマスター復活上映記念

『オペラ座の怪人 4Kデジタルリマスター』© 2004 The Scion Films Phantom Production Partnership

20周年『オペラ座の怪人』が4Kデジタルリマスターで復活

映画公開から20周年のアニバーサリーイヤーに、不朽の名作『オペラ座の怪人』が4Kデジタルリマスターで復活。6月14日より全国で公開される。

このたび『オペラ座の怪人』をはじめ、『エビータ』や『キャッツ』など世界的に有名なミュージカルを手掛ける天才作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーが、15年におよぶラブコールの末に映画化されたという本作の製作秘話を明かした。

天才作曲家アンドリュー・ロイド=ウェバーが語る!

刺激と絢爛、情熱の時代であった19世紀パリ・オペラ座では仮面をつけた謎の怪人・ファントムの仕業とされる奇怪な事件が続いていた。ファントムは若く美しいオペラ歌手クリスティーヌに才能を見出し、彼女に音楽の手ほどきをし、クリスティーヌはファントムを“音楽の天使”と信じてプリマドンナへと成長する。

幼馴染の青年貴族ラウルに愛されながらも、孤独な魂と情熱を持ったファントムに心を惹かれていくクリスティーヌだったが、ある日ファントムの仮面の下に隠された秘密を知ってしまう。一方、怪事件が続くオペラ座では、ファントムを捕まえようとラウルたちが立ち上がる——。

『オペラ座の怪人』の音楽を手掛けたのは、『ジーザス・クライスト・スーパースター』(1973年)、『エビータ』(1996年)、『キャッツ』(2019年)など、いずれも世界的な大ヒットミュージカルを手がけてきたアンドリュー・ロイド=ウェバー。彼は7つのトニー賞、3つのグラミー賞、ゴールデン・グローブ賞とアカデミー賞(『エビータ』)を獲得した、天才作曲家であり製作者でもある。

「ジョエル・シュマッカー監督は音楽に対して素晴らしい耳を持っていた」

1988年に『オペラ座の怪人』をブロードウェイでオープンした後、ロイド=ウェバーはこのミュージカルの長編映画版を制作するにあたって、ヴァンパイア・スリラー『ロストボーイ』(1987年)をヒットさせたジョエル・シュマッカーにアプローチ。その当時をこう振り返る。

ジョエルは驚異的なビジュアル・センスを持っていて、映画における彼の音楽の使い方は飛び抜けていると思ったんだ。

ジョエルとの共同作業で素晴らしかったことのひとつは、彼が音楽に対して素晴らしい耳を持っていることだった。彼は、音楽がどのようにストーリーを動かしていくのか、しっかりと理解していた。

だが、『オペラ座の怪人』の初演でクリスティーヌを演じ、創作中にはロイド=ウェバーのミューズともなった才能あふれる歌手・女優のサラ・ブライトマンとの離婚により、映画版の制作を延期。その後、数年間にわたって幾度かロイド=ウェバーはシュマッカーに映画化の協力を求めたが、同監督は『依頼人』(1994年)、『バットマン フォーエヴァー』(1995年)、『評決のとき』(1996年)、『フォーン・ブース』(2002年)など、のちの大ヒット作のため多忙を極めていた。

そして最初のラブコールから約15年の時を経て、2002年12月、運命とタイミングがついに一致。ロンドンでディナーを共にしたとき、ロイド=ウェバーは長らく待ち望んでいたプロジェクトの着手を提案する。

「つまり我々は、文化と闘っているんだ」

映画化に奔走していたロイド=ウェバーだったが、<ミュージカルの映画化>には長い困難が伴っていたと、苦笑まじりに明かす。

映画関係者から、こんなふうに言われたことがある。「オペラハウスで“歌う”ことは理解できる。でも、なぜ屋根の上で歌うのかは理解できない」――でも、それがミュージカルというものなんだ。

『サウンド・オブ・ミュージック』では山で歌う。修道院の中だけで歌うわけではない。つまり我々は、文化と闘っているんだ。

しかし2002年、名作ミュージカルの映画化作『シカゴ』が大ヒット。ウェバーは「もちろん非常に異なるタイプのショーではあるが、あの映画で面白いミュージカルは映画になりえる、ということが証明されたんだ」と時代の変化を振り返る。

ミュージカルの原作を脚色するに当たって、シュマッカー監督とともに主役たちの背景をさらに掘り下げ、オペラ座の舞台裏の世界をストーリーに付け加えたロイド=ウェバー。あるシーンを例に、ラウルの物語を膨らませた理由も明かしてくれた。

舞台のミュージカルでは、怪人の幼年時代に触れたが、映画版でやるように視覚的に戻ってみることはしなかった。

映画の冒頭、ラウルがオークションにいくシーンがある。そしてその後、亡くなったクリスティーヌの墓にまいるラウルが映し出される――そこで、この映画が<彼の思い出>であることが観客にはわかるんだ。

映画では、ファントム自身の物語が描かれている。彼の子供時代が語られているんだ。舞台でも触れてはいるが、映像として見ることはできない。とても大切な違いだよ。これでファントムについて、もっと深く理解することができるから。

「ファントムには危険な香りが漂う。それを声で表現しなくてはならなかった」

本作ではジェラルド・バトラー(ファントム)、エミー・ロッサム(クリスティーヌ)、パトリック・ウィルソン(ラウル)の3人は吹き替えなしで全ての楽曲を歌い上げているが、このこともキャスティングの絶対条件だったという。

エミー・ロッサムはメトロポリタン・オペラで学んだ17歳のすばらしい声の持ち主だし、パトリック・ウィルソンはすばらしく自然で叙情的なテノールで、しかも<オクラホマ>などに出演するミュージカル俳優。ジェラール・バトラーはロック系のテノールだった。

彼らの声のバランスがとても重要だった。ファントムには少しロック的な感性があり、少し荒削りで、少し危険で、型にはまらない歌手が必要だった。なぜならラウルを演じるパトリック・ウィルソンが見事な叙情的テノールだし、映画を見た時にクリスティーヌがなぜファントムに惹かれるのか、観客がすっと理解できなくてはならないからだ。ファントムには危険な香りが漂う。それを我々は声で表現しなくてはならなかったからね。

またロイド=ウェバーは、愛する作品の本質を見失わず見事に映画へと進化させた、シュマッカー監督の手腕も絶賛する。

映画版は、舞台作品からは大きくそれずに、より深い感情表現が中心となっている。視覚的また演出面では、舞台版に基づいてはいないが、本質は全く同じだ。それは、私が望んでいたことに他ならない。

『オペラ座の怪人』には、すばらしい目だけでなく、すばらしい耳を持ったシュマッカー監督がいた。彼は理解していた。なぜ、ここはカットすることができないのか。ミュージカル的理由を理解してくれていたんだ。

そして、そのミュージカル的理由が全てを引っ張っていた。それが映画監督とのコラボレーションのすばらしさの一つだ。我々は最高の時を持つことができたよ。

▼ざっくり解説!「オペラ座の怪人」とは?

ガストン・ルルーの小説を元に、アンドリュー・ロイド=ウェバーが1986年に作曲し、ロンドン・ウエストエンドにあるハー・マジェスティーズ劇場で初演された「オペラ座の怪人」。日本では、劇団四季によって1988年から各地でロングラン公演を果たしており、世界で1億6000万人が観劇。2004年、ロイド=ウェバー自身が製作・作曲・脚本を務め、『バットマン・フォーエバー』などのジョエル・シュマッカー監督とともにこだわりぬいて映画化。

2005年1月29日に日本で公開されると、リピーター続出の空前の大ヒットとなり当時のミュージカル映画史上最高興行収入を誇り、全世界興収の40%以上を日本が占めた伝説の作品。映画版では、舞台では描かれないファントムの出生の秘密やラウルとの決闘シーンも映画では追加されている。

パリ・オペラ座を舞台にした豪華絢爛な美術と衣装や装置の数々、高さ約5m、幅4m、2万個からなるスワロフスキー・クリスタル製のシャンデリアは圧巻。巨大なシャンデリアが落ちていくクライマックスの名シーンは息をのむスペクタクルだ。また、メインテーマ曲の「The Phantom of the Opera」をはじめ、名曲の数々は、きっと誰しもが耳にしたことがあるはず。

主演のジェラルド・バトラー、エミリー・ロッサム、パトリック・ウィルソンら主要キャスト3人は全ての歌唱を本人が行い、映画のためにロンドンのアビーロードスタジオにてフルオーケストラで収録された。第77回アカデミー賞では撮影賞、美術賞、歌曲賞(「Learn To Be Lonely」)にノミネートされ、世界的に高い評価を得ている。

『オペラ座の怪人 4Kデジタルリマスター』は2024年6月14日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

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