前鹿児島県警部長の文書漏えい先が判明 道警不祥事を扱った札幌の記者「面識ない。なぜ自分に送られたのか…」 情報確認難しく、福岡のウェブメディア運営者へ提供

記者の前でコメントする鹿児島県警の野川明輝本部長=7日午後6時、鹿児島市の県警本部

 職務上知り得た秘密を退職後に漏らしたとして、前鹿児島県警生活安全部長(60)が国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで逮捕、送検された事件を巡り、漏えいした文書の郵送先は面識のない北海道の記者だったことが7日、分かった。文書は別の捜査情報漏えい事件で家宅捜索を受けた福岡の記者に転送されていた。

 郵送先は、北海道札幌市の50代男性記者。北海道警の不祥事を扱った著書がある。雑誌やウェブメディアで執筆している。

 その記者によると、4月3日に差し出し人の記載がない封書を郵送で受け取った。6月5日に鹿児島簡裁であった勾留理由開示手続きで、郵送先として自分の名前が挙がったことを知り、送り主が前部長であると分かった。前部長は法廷で「マスコミなら不祥事を明らかにしてくれると思った」と述べていた。

 記者は「なぜ自分に送られたか分からない。鹿児島県警の情報の確認は地理的に難しいと判断した」と説明。文書を受け取った日、書面をメールでウェブメディアを運営する福岡市の60代男性記者に提供した。

 ウェブメディアの記者によると書面が届いた後、捜査情報を第三者に漏らしたとして地方公務員法(守秘義務)違反容疑で巡査長が逮捕された別の事件の関係先として県警から家宅捜索を受けた。その際、県警にメールの存在を指摘され「押収したデータが今回の事件の発覚につながったのだろう」と話した。

 一連の事件では、捜査資料とみられる文書が流出し、県警は3月18日、「100件を超える事件資料が外部に漏れた可能性が高い」と発表した。県警は刑事、警務部を中心に捜査、調査を進める中で、前部長の事件が発覚したとしている。県警はこれまで、両事件の漏えい先を第三者と説明し「同一かどうか明かせない」としていた。

◇前部長の準抗告認めず 鹿児島地裁

 職務上知り得た秘密を退職後に漏らしたとして、逮捕、送検された前鹿児島県警生活安全部長で、元警視正の無職の男(60)=鹿児島市紫原5丁目=について、鹿児島地裁は7日までに勾留の取り消しを求めた準抗告を棄却した。6日付。弁護人が明らかにした。

 弁護人の永里桂太郎弁護士によると、地裁は「逃亡すると疑うに足る相当な理由が相応に認められる。記録によれば、罪を犯したと疑うに足りる相当の理由が認められる」などとした。

 5日に鹿児島簡裁であった勾留理由開示手続きでは裁判官が「罪証隠滅と逃亡の恐れがあるため」と勾留した理由を説明。前部長は「野川明輝本部長が県警職員の犯罪行為を隠蔽(いんぺい)しようとしたことが許せなかった」などと意見陳述した。弁護側は同日、勾留の取り消しを請求したが簡裁が却下。弁護側は不服として6日、地裁に準抗告していた。

 前部長の勾留は12日まで。検察が勾留延長を請求した場合、裁判所が認めるかどうか判断する。

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