新シーズンまもなく 『バチェロレッテ』に女性視聴者がどハマりする背景「恋愛観の大変化と理想と現実の差」

※画像は『バチェロレッテ・ジャパン』シーズン3公式X『@BachelorJapan』より

1人の独身女性が、運命の相手を15人の男性参加者の中から探し出す――。

そんな舞台設定が視聴者の人気を博すのは、Amazon Prime Videoが配信する人気恋愛リアリティ番組『バチェロレッテ・ジャパン』(以下・『バチェロレッテ』)だ。過去に2シーズンが配信され、話題を呼んだ本作。6月27日からはシーズン3の配信が始まる。

それに先立ち、5月30日にはシーズン3に参加する男性メンバー15名の情報が発表されるや、SNS上でも《バチェロレッテ楽しみーー!今回は期待しちゃう!》、《バチェロレッテは楽しいよな》と、視聴者からは配信を待ち望む声が上がっている。

「3代目バチェロレッテを務めるのは東大工学部卒・元経産省というバリキャリウーマン・武井亜樹さん。“パートナーの座”をめぐる争いを繰り広げる男性陣には、ヴィオラ奏者、獣医、物理化学者、ヒューマンビートボクサーなど個性豊かなメンバーが勢揃いしています」(テレビ誌記者)

これまですべてのシーズンを視聴し、番組の大ファンだというトレンドアナリストの太田まき子氏は、番組にハマる理由について「ゲーム感覚」と「現代の女性像」と弊サイトの取材に対して指摘する。

「非日常で煌びやかなロケーションの中で一人の女性を男性参加者が奪い合う婚活トーナメント方式のエンタメ性が、ゲーム感覚で視聴者を引き込みます。しかも参加者は毎回バラエティ豊富で、それぞれの魅力があるので、自分の“推し”を考えながら見てしまう。駆け引きや心理戦、生々しい喜怒哀楽の感情を出していく姿にも感情移入していってしまうのです」(太田氏)

太田氏は、「『バチェロレッテ』は“女性だからといって(男性から)選ばれる側ではない”という点が、いまの時代にマッチしているのかと思います」とも言う。

「主人公となる女性は、毎回美貌、経済力、知性のすべてを備えていて、男性と対等に渡り合う。バチェロレッテシーズン1に出演した福田萌子さんは真正面から男性の本質を見抜きつつも、絶対に否定的な言葉を使わない姿が、女性の憧れる“強く逞しい芯の通った女性像”として反響を呼びました。

シーズン2に出演した尾崎美紀さんは強い意志を持ち、自分の力で夢を実現させている女社長。そんな“現代の女性像”をエンタメとして見ることができるのも、バチェロレッテならではの魅力かと思います」(前同)

■『バチェロレッテ』があぶり出す「男性の恋愛観」

働き方も多様化し、女性も男性と同じように仕事をする現代社会。女性の社会進出も進み、結婚相手として男性から“選ばれる”時代はすでに過去のこととなった。女性が男性を選ぶ『バチェロレッテ』。SNSでも毎シーズン盛り上がりを見せており、前出の太田氏が言うように“バチェロレッテの女性に憧れる”というワードも飛び交う。

女性たちはバチェロレッテの何にそこまで惹き付けられるのか。世代・トレンド評論家の牛窪恵氏に、『バチェロレッテ』があぶり出す男女の恋愛観と番組が支持を得る理由について話を聞いた。

そもそも『バチェロレッテ』となる女性は、単なる美しい女性ではない。ただ、かつては高収入、高学歴の女性は“可愛げがない”などとして男性からモテないとも言われたりしたが――牛窪氏によれば、大きいのは「男性側の変化」だという。

「男性が未来の妻に求めるものを聞く国の第三者機関の調査で、約半数の男性が“経済力”を挙げています。さらにその金額はというと、民間の調査では年収300万円以上が過半数超と最多。ほぼフルタイムで働かないと、この年収は無理でしょう。ガンガン男性が働けばよかった時代から、一人の収入だけでは家庭を支えられないという現代の経済事情を反映するような結果です」(牛窪氏)

かつては、自身が大黒柱として家族の生活を支える“男たるもの”という価値観が支配的でもあった日本社会。恋愛面でも男性が女性をリードするのが当たり前だった。それが恋愛面でも男性は草食化。草食男子なる単語も生まれ、牛窪氏が『草食系男子「お嬢マン」が日本を変える』(講談社)を著したのは2008年のことだ。以来、価値観の変化は加速している。

「『バチェロレッテ』の参加男性たちもそうですが、いまは恋愛経験がない、収入が安定しないなど、以前だったら男性がなかなか人前で言い出しにくかったことを赤裸々に語れる時代になってきています。“男たるもの”として頑張らされることって、やっぱりすごく疲れる。男性側が女性に弱みを明かし、“等身大”の関係を求めるようになっているのは、ここ10年ほどの大きな変化だと思います」(前同)

では、女性側はどうか。

「いまの時代、女性が男性を結婚相手として見る時は、家事や育児を一緒にやってくれそうかという姿勢や、話を聞いてくれそうか、趣味は合うかといった内面的な視点も重視するようになってきています。“一緒に”生活をつくれる相手かどうかを重視する傾向があります」(同)

背景にあるのは「女性は20、30代で仕事を辞めるもの」という認識が蔓延していた時代から、結婚・出産しても働くというスタイルが社会の中で当たり前になったことで、男性と“対等”な関係を望む女性が増えたことだ。

■なぜ『バチェロレッテ』は「気持ちがいい」のか

ただし、「女性側を取り巻く社会環境に、理想と現実のギャップがある」と前出の世代・トレンド評論家の牛窪氏は続ける。

「男女平等の教育がいきわたり、女性が男性をリードする、高収入を得るといったことがおかしくない世の中になる一方で、現実として置き換えると“自分にはできない”、あるいは社会がそれを許してくれないというギャップがあるのが現実です。

『バチェロレッテ』で展開されている女性優位、女性がパートナーに相応しい男性を選ぶという状況は、女性にとって“そうだよね、もうそういう時代だよね”という世界。それがフィクションではなく現実にいる人たちが繰り広げるリアリティ番組なので、より女性が見ていて溜飲が下がる、気持ちいい部分があるのでしょう」(牛窪氏)

ゲーム性とリアルがないまぜになり、女性たちの心をつかむ『バチェロレッテ』。

今の時代における真実の愛とは何か――視聴者も番組を通して見つけられるか。

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