初心者学生の「Gちゃれ」で ハーフ2時間10分の18ホールに挑戦

有馬カンツリー倶楽部(兵庫県三田市)では、2016年から大学体育ゴルフ授業の「Gちゃれ」を毎年行っていることを、誌面上で何度もご紹介してきた。

この授業プログラムを開発し、そして推進しているのが一般社団法人 大学ゴルフ授業研究会(北徹朗代表・武蔵野美術大学教授)だ。多くの大学でゴルフが教材とされているものの、その大半は学内での打ちっ放しで完結するカリキュラムとなっており、ゴルフ場の楽しさを体験できない。そこで、受講学生が正課教育(大学体育)で学んだ知識や技術を、課外教育(ゴルフコース)に接続するコースデビュープログラムとして、「Gちゃれ」が位置付けられている。

当クラブでは、大学ゴルフ授業研究会の承認を得、連携している大学授業の状況により、ゴルフコースで実施する正課教育も「Gちゃれ」と拡大解釈している。

毎夏に「集中講義」として開催している甲南大学と追手門学院大学がその対象だ。「集中講義」とは、夏休み期間などの短期間に集中して授業が行われ、単位が付与される授業のことである。

大学体育では、スキー授業合宿などで集中講義が実施される例が多い。これと同様に甲南大学と追手門学院大学では、3日間のゴルフ合宿によって1単位が付与される正課授業が行われ、近隣の施設で宿泊しながら有馬CCでゴルフ授業を実施している。

ただし、3日間だけではカリキュラムの時間数が不足するので、大学内での座学やゴルフ部施設、学外にある近隣練習場でのゴルフ練習などで事前授業が行われている。

以前、当クラブで始めるにあたって、大学の担当教授に授業の目標を質問したことがあり、

「できることなら18ホールをプレーさせることを目標にしたい」

ということだった。

有馬CCでの授業は、両大学ともに、当クラブのゴルフコーチが講師となって授業を進めている。

講師として進めていく上で、弊社で定めていたミッションがある。

「初心者学生に対し、どのようにゴルフを教えれば、ゴルフ場でゴルフを楽しませることができるか、ゴルフを好きになれるか」

である。

試行錯誤をつづける

ただし、大学の先生とゴルフ場側では、ミッションや目的に乖離がある。当クラブ以外にも「Gちゃれ」を受け入れているゴルフ場はあるが、特に近年は全国的に入場者が堅調なため、初心者の学生にコースを開放することが難しい。ゴルフ場が全面協力して、授業のペースを優先しながらプレー環境を提供することは困難という事情もあり、先生方は目標について、妥協せざるを得ないケースもあった。

そんな中、「Gちゃれ」をはじめて6年が過ぎ、弊社のミッションもある程度データが揃ってきたため、2023年の「Gちゃれ正課授業」より新たなミッションを加えることになった。

「いかにして集中授業の3日間で、18ホールをプレーラウンドできるまで成長させられるか」

ようやく、先生方の授業目標と合致するに至ったのである。

2023年8月に甲南大学14名、9月に追手門学院大学23名がそれぞれ受講、新たなミッションの完遂を目指して動き出した。

一般ゴルファーに交じったプレーラウンドのため、当然プレーペースは守らなければならない。最終組のスタート後に3ホール程度のプレーとは異なり、ハーフプレー2時間10分が目標と、通常と同じペースである。この間、初心者がいかに楽しくプレーできるかを念頭に、弊社コーチ陣は試行錯誤。まだまだクリアすべき課題はたくさんあるが、なんとか多くの組が18ホールを完走することができた。

技量に応じて柔軟にルールを設定したり、スクランブル競技形式などを用いてチームで進めたりなど様々な工夫を重ねながら、初心者が18ホールを、周囲に迷惑をかけることなく、しかもゴルフを楽しめることがもっとも大事。よりスムーズな方法が確立すれば、ゴルファー育成に役立つだけに、もっともっと様々な方法にトライしていきたいと思う。


この記事は弊誌月刊ゴルフ・エコノミック・ワールド(GEW)2024年4月号に掲載した記事をWeb用にアップしたものです。なお、記事内容は本誌掲載時のものであり、現況と異なる場合があります。

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