1回ポッキリ定額減税の裏で忍び寄る…6月スタート「こっそり増税」と「がっつり負担増」

国民には分かりにくいようにこっそりと…(岸田文雄首相)/(C)日刊ゲンダイ

景気の先行きは暗い。内閣府が7日発表した4月の景気動向指数は、数カ月先の景気を表す「先行指数」が前月比0.1ポイント減の111.6と、3カ月ぶりに低下。物価高を背景に消費者心理を示す消費者態度指数が悪化した。消費減を招く要因は何も物価高に限らない。「恩着せメガネ」こと岸田首相肝いりの定額減税が今月から始まった裏で、負担増が密かに国民生活へと忍び寄る。

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1人あたり4万円の定額減税は今のところ、今年だけの1回ポッキリの予定。岸田は「消費者マインドを喚起し、さらなる投資や賃上げにつながる経済好循環を実現する」と気炎を上げるが、1人あたり月3000円ちょいでは施しにもならない。

給与明細に減税分を明記させてまでアピールする一方、公的医療保険料に上乗せして徴収する事実上の増税「子ども・子育て支援金」については「税と医療保険は違う」と屁理屈をこねて明記に後ろ向きだ。

「増税メガネ」のトラウマなのか、国民には分かりにくいように、こっそりと増税と負担増を進めているからタチが悪い。実は今月から負担ラッシュ突入だ。ただでさえ電気代には5月支払い分から再生エネルギー特別賦課金をこっそり上乗せ、月500円ほど増えたのに、政府による電気・ガス代の補助が6月支払い分から半減。7月支払い分からは消滅だ。標準世帯では年間3万円ほどの負担増となる。

さらに今月から「森林環境税」として住民税に年間1000円が上乗せされる。この時期に届く納税通知書を見て「何コレ!?」と初めて知った人も多いはず。森林整備や木材利用の促進などが目的だが、もとをたどれば東日本大震災の「復興特別税」。「特別税」の徴収が昨年度で終了したタイミングで「森林環境税」に看板を掛け替えられたのである。

森林保全関連の資金は2022年までの4年間で、国から自治体へ計約1500億円も配分されたが、約35%にあたる525億円は未使用のまま。「森林環境税」も一部が塩漬けになる可能性は否めない。取られ損だ。

「政策に一貫性が欠ける」

こっそり負担増はまだある。今月1日から改定された診療報酬の引き上げに伴い、初診料は30円増の2910円、2回目以降の再診料は20円増の750円に。入院した際にかかる基本料金(入院基本料)も1日あたり50~1040円引き上げられた。皆さん、ご存じですか? 淑徳大大学院客員教授の金子勝氏(財政学)がこう言う。

「肝いりの定額減税は収入や世帯によって受益がバラバラですし、子育て支援金も負担と給付のバランスが悪い。減税や支援を打ち出しながら、その実、何をどうしたいのか狙いが見えてこない。政策的な目的がないから、減税や支援をうたいながら国民負担も平気で増やす。ゆくゆくは防衛増税が待ち受けていますが、防衛費増につながる円安インフレは放置。岸田首相はすべてが場当たりゆえ、政策も一貫性に欠けるのです」

かくして国民不在のまま、岸田の自己満足を満たすためだけの実効性のない政策が並ぶのだ。

すでに足元では、今年1月から生前贈与加算の延長という実質増税が始まり、4月からは後期高齢者の医療・介護の両保険料が引き上げられた。10月には社会保険の加入対象が「従業員101人以上」から「同51人以上」の事業所で働くパート労働者にも広がる。

ざっと並べただけでも、負担、負担、負担の嵐。雀の涙ほどの定額減税もがっつり負担増なら、ますます意味を失う。

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