福井県内の上場8社が増益…好調の要因は セーレンや三谷商事、フクビ化学工業

 福井県内の上場8社(金融機関除く)の2024年3月期決算が出そろい、全社が増益を達成。うち6社は過去最高益を記録した。燃料や原材料価格の高騰が一定程度落ち着き、価格転嫁を進め利益を確保した企業が目立った。半導体不足の緩和による自動車生産の回復も好材料となったほか、海外に製造拠点を持つ企業は円安が追い風となった。

 三谷商事はセメント、生コンクリートの建設資材や石油製品の価格転嫁を進め、営業利益、経常利益、純利益全てを前期比2割程度伸ばし、2期連続で最高益を記録した。自動車生産の回復を受け、カーディーラー事業は新車の供給改善で販売を伸ばした。

 セーレンも稼ぎ頭となった合成皮革のカーシート材の販売を伸ばし、3期連続で各利益の最高額を更新した。海外では中国で日系自動車メーカーの販売不振が響いたが、東南アジアやインド、米国、メキシコなどで受注を伸ばしてカバー。海外、国内事業とも増収増益となった。

 松屋アールアンドディは昨年9月のベトナムの新工場稼働が奏功し、エアバッグやカーシートなどセイフティシステム事業のアジアでの新規取引が拡大。同事業の売上高が前期比1.5倍となり、主力の血圧計腕帯などの事業を含めた売上高全体の3割以上を占めるまでに成長した。

 自動車などに使われる2次電池の正極材料を開発製造する田中化学研究所は、主原料の国際相場の関連益12億円を含めて各利益は過去最高。ただ、電気自動車(EV)への供給が期待される主力のリチウムイオン電池向けは、EVの需要鈍化を背景に販売数量が伸び悩んだ。

 フクビ化学工業は原材料高に応じた価格設定を進め、3年連続の増収増益。住宅の新規着工戸数が落ち込む中、環境配慮型の高付加価値商品の拡充にも取り組み、売上高総利益率の改善を進めた。

 同じく住宅着工戸数の減少に対応したのが、福井コンピュータホールディングス。リノベーション需要の高まりを受け現況調査アプリなどの開発により、増収増益を堅持。今冬には、建設業に特化した各種アプリをオンラインで販売する新サービスを開始し、経営環境変化への対応を急いでいる。

 三谷セキサンは主力のコンクリートパイル事業での建築資材の高騰や価格競争が引き続き激しく、売上高は前期比6%減少。納期管理の改善などによって過去最高益を確保した。

 jig.jpは主力のライブ配信事業「ふわっち」がけん引し、売上高、各利益ともに過去最高を更新。決済手数料などの販管費を抑えて利益を伸ばした。

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 円安による為替差益は、三谷商事が11億6100万円、セーレンは7億3600万円を計上。そのほか、松屋アールアンドディやフクビ化学工業、田中化学研究所などにとってもプラス材料となった。

 ただ、25年3月期は人件費などのコスト増や価格競争激化を折り込み、4社が減益を予想する。

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