「トイレ掃除が耐えられない」と辞めた大企業OBも…「50歳からの転職」成功のカギは「明確な目標」と「給料ダウンの覚悟」

「生き甲斐を追ってみたい」と思う人は多いだろうが……(写真・PIXTA)

「会社なんか辞めて、生き甲斐を追ってみたい」「自分には天職があるはず」――そんな衝動を持った経験は、多くの人にあるだろう。だが、50歳以上で転職すると、4人に1人は給料が1割以上ダウンするという(「令和4年雇用動向調査結果の概況」厚生労働省)

50代の転職について、人事ジャーナリストの溝上憲文氏に話を聞いた。

50代でも、AIや薬の開発、一級建築士などの特殊なスキルを持っていれば、引く手あまたです。ただ、営業や事務しか経験のない人は、いくら大企業出身でも、転職や再就職は厳しいというより、そもそも求人が極めて少ない。それでも転職している人のうち、ハローワークと縁故が全体の6割。CMでよく見る転職サイトは、わずか1割です。

プライドが高いのもネックです。静岡県のある中小企業が、大企業出身の方を中途採用したところ、すぐに辞めていったそうです。その会社では社員は全員、週1回トイレ掃除をするんです。ところが、その人は、それが耐えられなかったんです。

転職をする際に考えるべきなのが、自分が何歳まで生きて、老後の生活をどうしたいのか。自分の将来設計を描くことです。ある程度目安がつくなら、非正規になって若い方たちと楽しく働くのもいいですし、幼いころの夢を追うのもいいでしょう。今、どれぐらい稼げばいいのかを見極めることです。

起業を考えているなら、“金儲けの起業”はスキルや経験がないなら厳しいですが、社会に貢献したいというのはありだと思います。

私がソニーを取材したとき、あるエンジニアの方の話を聞きました。

その方は、「子供が好きだから」と、55歳で保育士の資格に挑戦して取得し、60歳の定年後は保育士に転身したそうです。この方は、自分の老後のビジョンをきちんと考えていたんでしょう。

しかし、明確な目標も特別なスキルもないのに転職しようか迷っているなら、会社にしがみついたほうがいい。50代で転職を目指す人を待つ現実は、けっして甘くありません。

写真・久保貴弘、共同通信、PIXTA

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