鹿島「吉と出た」人事とSB「新発見」、G大阪「上昇」の鍵は宇佐美、神戸「本当にすごい」大迫、優勝は【J1「まさかの前半戦」と「マジかの後半戦」大激論】(3)

ガンバ大阪をキャプテンとして牽引する宇佐美貴史。撮影/原壮史(Sony α1使用)

2024年のJ1リーグが、折り返し地点にたどり着こうとしている。20チームで臨んだ前半戦は、良い意味でも悪い意味でもサプライズがあった。また、後半戦の展望につながる新たな材料も見つかった。前半戦をいかに消化し、後半戦に昇華させていくのか、ベテランのサッカージャーナリスト、大住良之と後藤健生が徹底的に語り合った。

■鹿島「2位」要因は知念慶コンバート

――鹿島アントラーズは、監督交代が吉と出たとみていいですか。

後藤「ランコ・ポポヴィッチ監督でどうなるかなと、みなが思っていたけれど、意外と当たったなという感じ。あの人は自分の色を押しつけるんじゃなくて、既存の選手の能力をうまく引き出すよね。さらに、新しい選手の特長もうまく引き出して、全員で一生懸命やる。それがうまくいった」

大住「新人の右サイドバック、濃野公人のような大発見もあったし」

後藤「まさにサプライズだったね」

大住「知念慶をボランチにコンバートしたことも、今のチームの成績に結びつく、すごく大きな要因だった」

後藤「仲間隼人も柏レイソル時代は、それなりに良い選手だなと思っていたら、今では左サイドで存分に能力を発揮している。名古新太郎もすっかり復活したし、全員が自分の得意なプレーをすることで、チームもうまく回っている感じ。そこにアレクサンダル・チャヴリッチというサイドでも使えるCFタイプを連れてきて、非常に短期間で良いチームをつくったよね。植田直通と関川郁万のCBコンビは、そりゃあ強いしね」

■選手層も厚い鹿島が「優勝」に一番近い

大住「樋口雄太や松村優太とか、起用すれば計算できる選手が多いんだよね。選手層も厚い」

後藤「鈴木優磨の名前も出さないといけない。鈴木とチャヴリッチが前にいたら、相手の守備は引きつけられちゃうよね。サイドにスペースを空けちゃいけないと思っていても、真ん中にあの2人がいたら、対応しに行くしかないもんね」

大住「今年はだいぶ選手を外に出したし、それほど補強をしなかったうえに、新監督への疑問もあったので期待値はあまり高くなかった。でも、始まってみたら非常にうまくやっているな、という感じがする。

後藤「プレシーズンマッチのいばらきサッカーフェスティバルを見て、攻撃のスピードアップができていて悪くないなと思ったけれど、思っていた以上にうまくいったね」

大住「さらにACLという罰ゲームがない。そういったさまざまなことを考え合わせると、鹿島が優勝に一番近い位置にいるかな、という気がする」

■王者・神戸「去年からの変化」は宮代大聖

――ガンバ大阪も上がってきました。

大住「ガンバの試合内容は良くなっているよ。全体の動きのハーモニーが取れてきて、それを宇佐美貴史がつないで、非常に効果的な攻撃にしているよね。宇佐美は今年、とても良いと思う」

後藤「そうだね。FC町田ゼルビアにしても鹿島にしてもガンバにしても、すごく変わったことをしているチームじゃないんだよね。非常にオーソドックスなサッカーをしているチームが上位にいるな、という印象。そのうえで、ただオーソドックスなだけじゃなくて、それぞれに少しずつ特徴がある。ガンバの場合は、変化をつけてくれる宇佐美だね。強かった頃の川崎フロンターレや、アンジェ・ポステコグルー監督に率いられていた時期の横浜F・マリノスは、すごく変わったこと、特別なことをやっている感じだったけど、今年の上位陣にはそういうチームがない。ハードワークして真面目にサッカーしているな、という感じ。ダニエル・ポヤトス監督もいろいろなことをやろうとしていたようだけど、結局はそこに戻ってうまくいっている感じだね」

大住「そういう真っ当なサッカーの代表格が、ヴィッセル神戸だよね。スピードや強度があって、個々の選手のレベルが高く、そういう持ち味で去年のJ1を制したわけだけど、さらに少し良くなっている感じがするな」

後藤「去年から変わったのは、宮代大聖が入ったことだよね。川崎時代からうまかったけど、今年は点を取れる選手になった。去年のリーグMVPの大迫勇也はそれほど点を取っていないけれど、宮代と一緒に点を取る状況をつくり出している。それにしても大迫はすごいFWですね。かなりアバウトなボールでも、何とかつないじゃうからね」

大住「大迫は、ヘディングで味方が走るところに正確に落とすしさ」

後藤「FKもうまくなったし。と思ったら、まさかのPK失敗に驚かされたけど(笑)」

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