【水戸×長崎戦】勝敗を決した「後半102分のPKはなぜ生まれたのか?」(2) デルガドの決勝ゴールが生まれたジャッジ変更「2つの大問題」

最後の最後で勝ち点を逃した水戸ホーリーホック。現在、17位と苦戦が続いている。撮影/重田航

明治安田J2リーグ第18節、水戸ホーリーホック(以後、水戸)対V・ファーレン長崎(以後、長崎)戦がケーズデンキスタジアム水戸で行われた。
試合は2対3で長崎が勝利した。このゲームにおいて、大きな問題があった。榎本一慶主審が一度下したジャッジを変更したのだ。
それによって長崎が勝利することになったレフェリーの判定について、サッカージャーナリストの川本梅花が考察する。

PKを宣言されても「おかしくない」プレー

先に述べた決勝点が生まれた場面を振り返って、主審の行為の問題点を述べてみよう。
長崎の左サイドバック、米田隼也がタッチラインをドリブルで駆け上がる。
米田は、ペナルティエリアに入ってきたマテウス・ジェズスに横パスを送る。前田椋介がジェズスをマークする。
ドリブルしてゴールに向かうジェズスに、前田が両足を出して倒してしまう。このプレーに対して主審はノーファールを宣言したのだが、場面を見る限り、PKを宣言されてもおかしくないプレーだった。
ドリブルするジェズスの目の前に、山田奈央がカバーに入っていたので、前田は無理に足を出す必要はなかった。
主審がジャッジを変更した行為の問題点は2つある。まず、一度下したジャッジをフォース・オフィシャル(第4の審判員)との話し合いで変更したことだ。

自らの責任や権限を「放棄している」ように

おそらく、仲間のアドバイスがあったので、自分が下したジャッジを変えたのだろうが、外から見ていると、長崎の抗議によって判定を変えたように見えてしまう。主審の行為は、自らの責任とか権限を放棄しているように写ってしまうのだ。
人間の判断は間違いをともなうし、過ちも犯してしまうことがある。だから、間違いを正すのはいいことだが、サッカーにおいての主審の行為としてはお粗末に見える。なぜなら、人の意見で最初に下した自分の意見を変えたことになるからだ。
2つ目は、自分がアディショナルタイムを5分に設定しておきながら、長崎のフアンマ・デルガドのPKが決まったのは、102分を過ぎていたことだ。合計12分のアディショナルタイムになっている。
はたして、長崎側に自分の下した判定について、こんなに時間をかけて説明する必要があったのかどうか。
ノーファールと宣言した自分のジャッジに不安があったので、説明に時間をかけながら仲間のアドバイスを受け入れて、ジャッジを変更した。結果、抗議すれば、ジャッジが覆るケースもあるという悪例を作ってしまった。
水戸側はクラブとして、主審のこの行為を問題にするべきである。

© 株式会社双葉社