伊藤沙莉『虎に翼』に欠かせない花江・森田望智は明らかな準主役、好調を支える“コインの裏表”の貢献度

森田望智※画像はNHK『虎に翼』公式インスタグラムアカウント「asadora_ak_nhk」より

伊藤沙莉(29)主演のNHK朝ドラ『虎に翼』(月~金曜)の第11週「女子と小人は養い難し?」が、6月10日から放送される。弁護士編がスタートした第7週で、平均世帯視聴率を17%台に初めてのせ、終戦を迎えた第9週で、18.0%(ビデオリサーチ調べ/関東地区)と最高記録を更新。好調が続いているが、その要因はどこにあるのか。

寅子(伊藤)は、夫・優三(仲野太賀/31)を戦病死で亡くす。その死と向き合おうとする中、寅子は焼き鳥の包み紙の新聞紙に日本国憲法を見つけ、「法の下の平等」という理念に感動。未来への希望を見出した。本作は、主人公の幼少期も出産シーンも描かれない、これまでの朝ドラの定石にとらわれない内容で伊藤の演技が高評価されているが、森田望智(27)の存在も大きい。

実は、寅子と親友であり義理の姉でもある花江(森田)はコインの裏表。これまでの規範に疑問を持ち、それに抗い突破する寅子の一方、花江は現状を受け入れ、その中で生き抜いていく存在だ。実際に、これまで2人は対称的に描かれていた。

序盤では、結婚に疑問を持つ寅子に対し、花江は寅子の兄・直明(上川周作/31)とさっさと結婚。その披露宴で、寅子は愛唱歌「モンパパ」を歌った。寅子は、男性ばかりが盛り上がり、女性は「スンッ」とした顔で控えめにしていたため、歌に怒りを込めていたが、花江は、女学生のうちに結婚するという夢をかなえて幸せそうだった。

また、明律大学で法廷劇をやるため、女子部の同級生たちが寅子の家に集まって衣装を作っているときのこと。充実した様子の寅子の一方、花江は、寅子の母である姑・はる(石田ゆり子/54)との関係上、嫁という気を使う立場に疲弊している。

さらに、直近の第10週「女の知恵は鼻の先?」の第47回で、寅子はGHQのホーナー(ブレイク・クロフォード)と司法省で働くが、花江は、夫の命を奪ったアメリカ人と寅子が一緒に働くことを、負けたのだから仕方ないと思いつつ、受け入れられずにいた。

■花江がいなければ寅子の支持は――

場面場面で寅子と花江は、それぞれの違う立場が対称的に描かれていて、それは、まるでコインの裏表のよう。表面上だけ見れば、花江がただの古い女。せいぜい、寅子のツラいときに寄り添ってあげる親友的ポジションに思えるが、それだけではない。

本作は、現代にもつながる女性問題に大胆に切り込み、これまでの朝ドラにない展開を見せてきた。恋愛はせず、育児に奮闘することもないという、画期的なヒロインだが、すべての視聴者がスムーズに受け入れられているのだろうか? 寅子の女性像にとまどっている人もいるだろう。

寅子が女性が虐げられていることに怒っているとき、花江は寅子と真逆の穏やかな振る舞いを見せる。今まで通りの朝ドラらしい、妻や母としての振る舞いを見せることで、寅子をより際立たせ、説得力を与えている。花江という存在がなければ、寅子はここまで受け入れられたか、実は微妙なのではないか。

そんな花江も6月7日放送の第49回で、ホーナーは祖父母がユダヤ人で、亡命して米国にやって来ており、戦争で大勢の親戚が犠牲になったことを知ると、少し柔らかい表情を浮かべ、彼を受け入れたように見えた。寅子とともに花江も変わり始めている。本作の準主役ともいえる最重要人物を演じる森田に注目していきたい。(ドラマライター/ヤマカワ)

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