【連載】Hiroのもいもいフィンランドvol.136「メンバーにジブリファンと寿司職人がいるBlock Of Flats インタビュー」

2023年秋にこのコラムで紹介した、ふと目について気になったバンドのひとつBlock Of Flats のライブが3月になんとこの地元の小さなライブハウスである告知が目につきました。こんな田舎のライブハウスで自分好みのバンドが出演することなんてめったにないので、これはもう観に来いよ!って言われてるようで、はい!観に行ってきました。やっぱり観に行く運命にあったんでしょうね(笑)、ライブもよくて気に入りました!ライブ後はメンバーみんな物販のテーブルの側に出てきてファンサービスもしててとてもフレンドリー。その後5月にヘルシンのOn The Rocksでライブがあったので取材を問い合わせてみたところヴォーカルのヨンネとギターのイェッセがライブ前に会場で応じてくれることになりました。

──まず一番最初にあなたたちのバンドBlock Of Flatsについて紹介してもらえますか?

ヨンネ:俺達みんなポルヴォ―出身で、このバンドを2013年に結成した。それから11年になるよ。オルタナティヴ・ロックだけど、最新のアルバムではちょっとメタルっぽいサウンドになってる。とはいってもメタル・コアとは言わないな。その雰囲気はあるけど、オルタナティヴ・メタルって感じかな。ロックなメタルだ。

──さっき話に出ましたが、バンド結成は2013年でみんなポルヴォ―出身ってことですが、今もポルヴォ―にみんな住んでるんですか?

ヨンネ:ベースのカウリはまだポルヴォ―に住んでるけど、他のメンバーはヘルシンキに住んでる。

──結成してから現在に至るまでの間にメンバーチェンジはありましたか?

イェッセ:ベースはかわった。最初はオスがベースだった。今のベースのカウリは結構長くいるよ。

ヨンネ:彼は2016年だったか2017年頃加入した。オスは3~4年いた。ってことで一人ベースのメンバーチェンジはあった。

──影響を受けたバンドはありますか?

ヨンネ:あぁ、もちろん。たくさんあるよ。まず最初の頃Disco Ensemble(フィンランドのポストハードコア/オルタナティブロックバンド)の影響は強かった。それからMuseも。

イェッセ:最初の頃はよく聴いてたな。そういう方向に行くかとか。そこに新しいエレメントが加わってきたりもした。スコットランドのバンドBiffy Clyroもよく聴いたな。

ヨンネ:最近はメンバー各自それぞれ好きなバンドがあったりするけど、かといってそれが世界一大好きなバンドってわけでもない。最近はロック以外のバンドを聴いたりもあるな。

イェッセ:その時々でだけどTHE WEEKENDを聴いたりの時もあるし、ポップ系を聴いたりあるしいろいろ聴いてる。

ヨンネ:ポップソングはサビが最高だったりするもんね。

──デビューアルバム『No Hope For the Hopeless』が2023年11月にリリースになりましたが、なぜこのアルバムを聴くべきかって理由を3つ挙げてもらえますか?

イェッセ:よいアルバム(笑)。まずはそれがひとつめの理由だ。

ヨンネ:全体によいものがつまってる。それからもしBlock Of Flatsがどんなバンドかまだ知らない人には、こういうバンドだって知ってもらえる名刺みたいなアルバムだ。次のアルバムが出たらちょっと変わるかもしれないけど、まず基盤になるブロックが積み上げられた良いアルバムだ。家を建てる時に例えると、まず基盤を作って、次にどんな壁ができるか。

イェッセ:3番目にその上にどんな屋根がつくか。そして車庫。

ヨンネ:そしてそれらにどんな色を塗るか。

──では曲はどうやって生まれますか?メンバー全員曲作りに参加してますか?

ヨンネ:基本的に90%は俺が作ってる。最初のアイデアを出して、イェッセかカウリ、またはプロデューサーとか、他の人って場合もあったりで一緒に仕上げていったりすることもあるけど、曲によってずいぶん違ってくる。例えば「Lake of Fears」のように、デモからあまり変更なしに俺一人で書き上げた曲もあれば、最初のアイデアを出してから一緒にアレンジしていった曲もあったりで、曲によっていろいろだ。

イェッセ:最近は誰と一緒に作ったのが一番いいできかで、アレンジしていったりしてる。

ヨンネ:誰が誰と一緒に作るかが重要ではなくて、よい曲!それが一番重要だ。曲がよければ誰が作ったかは関係ない。

──ヨーナス・パルッコネン(Santa Cruzの元ギタリスト、ジョニー)が一部曲のプロデュースをしてますが、自分達でもプロデュースするんですよね?

イェッセ:アルバムの中の4曲はヨーナスがプロデュースしたもので、残りの曲は自分達でプロデュースした。

ヨンネ:イェッセと2人でね。曲も2人で作ることが多いから、プロデュースも俺達2人でした。それも外の人を使わないって点では俺たちの名刺になると思う。

イェッセ:ヴォーカルのプロデュースはラミ・ニュカネンがやった。あとラークソン・ハリユと一緒にヨンネがシンセのプログラミングをやった。

──すでに国外ツアーもしたことあるんですよね?どこの国を周ったのですか?

イェッセ:タリン(エストニア)、ラトビア、ポーランド、チョコとスロバキアを周った。

ヨンネ:将来的には次は俺たちのジャンルに重要なドイツ、オーストリア、スイスに行きたい。可能性がやってくればまずドイツにはできるだけ早くいきたいな。

──国外のツアーで楽しかった思い出とかありますか?

イェッセ:もちろんいっぱいあるよ。一番よかったのはメンバーと一緒に周れたことだな。予期できなかった出来事なんか話し出したら一晩中話し続けなきゃならないよ(笑)。

ヨンネ:うん。そうだな。長い時間を一緒に過ごすことになるから時にはイライラすることもあったり、個性もいろいろだけど、ずっと長く一緒にやってきてお互いをよく知ってる間柄でツアーして一緒に過ごせたのは楽しかったな。面白かったことを一つあげるとスロヴァキアでだったかな。ライブ会場の地下に自家製ワインを作ってる場所があって、そこにツアーマネージャーが迷い込んでしまい、ライブ前にそこにあったワインの味をきいたかもしれないな(笑)。

──日本には行ったことがありますか?

イェッセ:まだ行ったことないけど、行けたらとっても嬉しいな。

ヨンネ:イェッセもそうだと思うけど、俺もずっと行きたいと思ってたんだ。俺達スタジオジブリの大ファンなんだ。日本にはいつか行きたいと思ってたんだけど、もしバンドで行くことができたらものすごく嬉しいよ。ドイツ、アメリカ、そして日本が最も行きたい国だ。

──じゃもしライブで日本に行けることになったらどこに行ってみたいですか?ジブリ美術館とかありますよ。

ヨンネ:あぁ、そこすごく行きたい!

イェッセ:俺も行きたい!それから寿司レストランに行きたい。フィンランドで5年間寿司職人してたんだ。本場の寿司をぜひ食べてみたいな。

──え、なんと寿司職人してたんですか?

イェッセ:あぁ、してたよ。俺の職業コックなんだ。ヘルシンキのいくつかのレストランで働いてたよ。

──最近寿司バイキングのレストラン増えてますよね。

イェッセ:あぁ、でもあのバイキングの寿司はちょっと…。活きのいいちゃんとしたネタがなかなか手に入らなくてね。ワサビにしても本物はすごく高価だし。

ヨンネ:東京にすごく大きいレコードショップがあるよね。何階もある。

──渋谷に大きなタワーレコードがありますよ。

ヨンネ:そうそう。そこにいきたい。でも一番はジブリ美術館だな。

イェッセ:俺も1番はジブリだ。映画の中に興味を惹かれる音楽の世界があるんだ。多くのフィンランド映画で感じるメランコリーのような。ただ違った意味でなんだけど。見かたによったら2つの世界が遭遇してるような。フィンランドの映画に同じような特徴を見つけだすこともできる。ただそれは音楽という形で現れるのではなくて、物語って形で現れる。それがジブリの映画では音楽からそれを感じる。胸を締め付けられる感情が沸き起こることもあるけど、同時にポジティブなエネルギーも感じるんだ。

──デビューアルバムが発売になって、そのアルバム発売に伴うライブを今やってるところですが、他にどんな予定がありますか?

ヨンネ:今予定されてるライブをやって夏はフェス出演があって、同時に次のアルバム用の新しい曲も作っていってる。その中から良い曲を絞っていって曲ができあがったらリリースすると思うけど、アルバムか、まずは他のリリースになるか。いい曲が充分集まったら来年あたり次のアルバムってことになるかな。

──前作の時はどのくらいデモ曲ができてたのですか?

イェッセ:40曲ぐらいできてた。長い間に出来上がってきてた曲で、古い曲はすごく昔ので、新しいスタイルには合わなくなってきてて、そのままでは使えなかった曲とかもあった。

ヨンネ:2作目はもちろん予定しているけど、それがいつ頃になるかはまだはっきりわからないな。どんだけいい曲が書きあがるかによると思う。

──最後にBARKSの読者にメッセージもらえますか?

「ハロー、BARKSの読者のみんな!俺イェッセ。俺ヨンネ。俺達Block Of Flatsってバンドだ。俺たちのデビューアルバム『No Hope For the Hopeless』リリースになった。聴いてみてくれ!とってもいいアルバムだから、気にいってもらえるはずだ。」

Block Of Flats メンバー:
Jonne Nikkilä(ヨンネ・ニッキラ) – ヴォーカル
Jesse Kataja(イェッセ・カタヤ) – ギター
Kauri Koponen(カウリ・コポネン) – ベース
Ossi Ågren(オッシ・オーグレン) – ドラム

この日のライブはエモ系の3バンドが出演。トップバッターは4月末Blind Channelのノキア・アリーナ公演のオープニングアクトだった若手メタルバンドLASTOUT、続いてアメリカンな感じが漂うMTVKID、ヘッドライナーが彼らBlock Of Flatsでした。

予定されてた開演時間を20分ぐらい過ぎてヴォーカル以外のメンバーがステージに現れ待機。そこへヴォーカルのヨンネが登場!取材の時は帽子とパーカーのフードをかぶってて髪の毛が隠されてたのですが、シックな黒いジャケットを着てステージに登場したヨンネは以前のブロンドからピンクの髪の毛に変身していてびっくり。通常ステージの後ろの壁に掲げられるバックドロップがなぜか縦長で両横に掲げられてると思ったら、ライブが始まると後ろの壁に動くデジタルの映像がどんどん映し出されライブにスピード感が感じられました。ステージ前方に横長の踏み台が設置されていて、ギター、ヴォーカル、ベースの3人はその踏み台に上がることが多くて、ステージ前にカメラマン用のスペースもとられてなく、最前でステージのふちにくっついて観てると、目の前に来ると真上を見上げる感じで汗が落ちてくる近さ。

メタル・コアではないと言ってましたが、確かにちょっと違う。ロックにメタル色を加えた感じでけっこうヘヴィに聴こえたりするものの、どことなくフィンランドっぽいメランコリーさも感じるサウンド。派手なギターソロがあるわけでもないものの、ギター、ベース、ドラムのサウンドが絡み合いメロディアスヘヴィで同時になんとなくメランコリー感が漂ってる。ポップっぽさが感じられる曲もあり、シンセも加わっていたりで、一つのジャンルにはとても納められない感じ。ロック好きにも最近の曲はメタルコア好きにも受けるのではないかな?と思います。

この日の公演ソールドアウトの発表はなかったものの、終わって後ろ振り向いたら人がいっぱい詰まってました。ライブ後気が付いたのですが、この日のサウンドエンジニアはバンド活動再開が発表になったPrivate Lineのサミー・アールトネンでした。ライブ後会場はディスコになって、懐かしいHIMとかNegativeが流れたりして夜はまだまだ続いてました。

3月のこの町内でのライブの時、田舎の会場とはいえ、目ざとく彼らを見つけだしたと思われる若い女性ファン何人かが早くから最前を陣取っていたのですが、今回のヘルシンキ公演も彼らのバンドT着た若い女性ファン達が開場と同時に最前確保して待ってました。まだ昨年11月にデビューしたばかりですが、若い女の子達は将来のスターを見つけだす目を持ってると思いませんか?彼らの今後に注目したいです。

それにしても2人ともジブリファンで、イェッセは寿司職人を5年ほどしてたってのはびっくりでした。フィンランドで最近増えてる寿司バイキングの寿司が日本の寿司とはちと違うことに気が付いてくれてたのは嬉しかった。将来来日公演が実現してジブリ美術館訪問と本場の寿司を味わえる日が来ますように!気になった方Block Of Flatsぜひチェックしてみてくださいね。

アーティスト写真◎Aapo Mattsson
文&ライブ写真◎Hiromi Usenius

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