復活した鎌田大地と遠藤航の「後継者」、森保監督「最高の采配」と後半の小川航基【日本代表「ミャンマー戦の収穫」と「シリア戦の課題」】(2)

小川航基は森保ジャパンの最終オーディションに合格したのか。撮影:中地拓也

サッカー日本代表が、ワールドカップ・アジア2次予選を戦っている。6月6日のミャンマー戦は、5対0の完勝に終わったが、その結果だけではなく、大きな収穫があった。11日のホームでのシリア戦も含めて、この2試合をどのように活用すべきか、サッカージャーナリスト後藤健生が考察する。

■移籍後「ポジションを失った」鎌田大地

鎌田大地の復活も大きなプラス材料となった。

昨年の夏にセリエAのラツィオに移籍したものの、マウリツィオ・サッリ監督の信頼を勝ち取ることができずにポジションを失ってしまい、代表からも離れていた鎌田だが、今年の3月にラツィオの監督がイゴール・トゥドールに代わるとチームの中心として起用されるようになったことで、プレー精度もすっかり元に戻ったようだ。しかも、シーズンの前半にベンチを温めることが多かったので、1シーズンを戦い抜いた直後の他の海外組と比べると、疲労の蓄積も小さかったのだろう。

中村敬斗を走らせて先制ゴールにつなげた芸術的なスルーパスをはじめ、鎌田は62分に交代するまで攻撃のタクトを振るい続けた。そして、35分には中村からの横パスを受けてシュート。ボールを受けてからシュートまでの動きが非常にスムースだった。そして、このシュートがポストに当たって堂安律のゴールにつながった。

中盤での守備では守田英正が存在感を見せた。相手にボールを奪われても、日本の選手たちは素早い切り替えですぐにボールを保持するミャンマー選手にプレッシャーをかけてカウンターの芽を摘んでいたが、とくに守田が高い位置で激しいプレッシャーやタックルでボールを奪い切ったことで、相手を完全に押し込むことができた。

そして、元川崎フロンターレ組として守田はバランサー役の旗手怜央との連係も良く、高い位置でボールを奪って攻撃を途切らせることがなかった。

この試合のマジェド・モハンメド・アルシャムラニ主審(サウジアラビア)は、日本選手が激しく寄せてミャンマーの選手が倒れるとすぐに反則を取ったが、実際にはノーファウルの場面もかなりあった。正当なジャッジをしてもらえていれば、日本はショートカウンターからさらに多くのチャンスを生み出せていたことだろう。

守田があれだけのプレーをしてくれれば、万一、遠藤航が故障した場合でも中盤の底を任せることができるだろう。

■生き残りをかけた「最終オーディション」

1トップでは、小川航基が結果を残すことに成功した。

小川は「初招集」ではないが、前回の招集はEAFF E-1選手権、つまり海外組がいない代表での招集だったので、実質的には今回が初代表ということになる。

桐光学園高校時代からそのシュート技術の高さは知られていたが、ジュビロ磐田では不完全燃焼が続き、2022年に横浜FCに加入してから一気に花開いた小川。同年にはJ2リーグ得点王に輝き、そして、昨年夏にNECナイメヘンに移籍。オランダのエールディヴィジで11ゴールを決めて、ようやく海外組を含むA代表に招集され、いきなりミャンマー戦で1トップを任されたのだ。

8月には27歳になる小川。センターFWとしては1歳下の上田綺世がすでに代表で結果を出しており、さらにオリンピック世代の細谷真大というライバルもおり、さらに下の世代にもミャンマー戦の前日にU-19代表でイタリア相手にハットトリックを決めた塩貝健人など、可能性を秘めたFWが目白押し。

小川にとっては、今回が代表での生き残りをかけた最終オーディションのようなものだった。

しかし、前半は30分に堂安からのスルーパスに反応した場面など、日本代表の攻撃にうまく絡めたのはごくわずか。35分に堂安が2点目を決めた場面でも、鎌田のシュートがポストに当たった瞬間、小川もすぐ近くの位置にいたものの、堂安が一足早く反応してゴールを決めてしまった。

つまり、前半はハーフタイムで交代を命じられていてもおかしくないようなパフォーマンスだったのだ。

■森保監督「我慢の起用」で2ゴール&決定機

だが、森保監督はここで我慢をして後半も小川をピッチに送り出した。「小川を交代させなかったこと」。それこそ、3バックのテストを行ったことと並んで、ミャンマー戦での森保監督の最高の采配だった。

後半に入ると、小川は前半よりも積極性が増し、52分にワンタッチのパスをつないで、最後は鈴木唯人がシュートを放った場面でもパス回しに参加。そして、75分には右サイドの相馬勇紀からのクロスに反応し、ファーサイドに流れてDFのマークを外してヘディングシュートを決めた。

待望の1点が決まると、小川のプレーはさらに積極化。83分には、相馬からのアーリークロスが相手DFに当たってこぼれたところを小川が決めて自身の2ゴール目。

こぼれ球に反応して、ターンして決めた辺りの落ち着きとシュートの美しさは、さすが小川といったプレーだった。

その後、87分には相馬のFKに対して、伸びあがるようなジャンプから正確に頭でとらえて、ポストをかすめるシュートも放った。

そして、90+3分。ボランチでプレーしていた板倉滉からのくさびのパスを受けた小川は、相手選手と接触して倒れながら、ヒールで残して中村のゴールをアシストした。

2ゴールを決め、その他にも何度か決定機を作り、最後はターゲットとしての仕事を果たした小川。これからも代表に招集されるだろうし、センターFW争いに加わることは間違いない。

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