21歳アルカラスが「夢見てきた」全仏OPで初優勝!四大大会の全サーフェスを史上最年少で制覇し“ナダル超え”<SMASH>

テニス四大大会「全仏オープン」は大会最終日の現地6月9日に男子シングルス決勝を実施。第3シードのカルロス・アルカラス(スペイン/世界ランク3位)が第4シードのアレクサンダー・ズベレフ(ドイツ/同4位)を6-3、2-6、5-7、6-1、6-2のフルセットで下し、同大会初の優勝並びに四大大会3度目の優勝を飾った。

21歳の若きヒーローがまたしても新たなマイルストーンを手にした。クレーシーズンに入ってからは右腕の負傷に悩まされ、前哨戦のイタリア国際(イタリア・ローマ/ATP1000)は欠場を余儀なくされたアルカラス。そんな中で迎えた今大会は同箇所のケガの影響を感じさせない素晴らしいプレーで勝ち上がり、準決勝では4時間を超える大接戦の末に宿命のライバル、ヤニック・シナー(イタリア/2位)を2-6、6-3、3-6、6-4、6-3で撃破。苦しみながらも全仏初制覇に王手を懸けていた。

決勝で顔を合わせたのは、22年の全仏で負った右足首の大ケガから見事に完全復活を遂げた27歳のズベレフ。今大会は初戦で全仏最多14度の優勝を誇るラファエル・ナダル(スペイン/元1位/現275位)を破って以降苦しい試合を次々と乗り越え、20年の全米オープン以来となる四大大会決勝へとたどり着いた。

大注目の一戦となった今回の決勝は、ジェットコースターのような目まぐるしい展開となったが、最後にはアルカラスの勝負強さが勝った。
立ち上がりは硬さが見られた両者。そうした中でもアルカラスは持ち前の多彩なプレーでリズムをつかみ、第1ゲームでいきなりズベレフのサービスを破る。直後の第2ゲームでは自身のミスが続いてブレークバックを許すも、第5ゲームでは相手に圧力をかける攻撃的なプレーで再びブレークを奪取。チェンジオブペースを交えながらラリー戦を支配したアルカラスが43分で第1セットを先取する。

第2セットは出だしから緊迫の攻防が繰り広げられる。10分以上の攻防の末に第1ゲームをキープして流れをつかみかけたアルカラスだったが、粘り強いプレーで対抗してくるズベレフを崩すことができない。反対に自身はズベレフの深いショットに苦戦を強いられ2度のブレークを献上し、1セットオールとされる。

続く第3セットも互いにキープを継続するシーソーゲームに。先に均衡を破ったのはアルカラスだった。第6ゲームでは正確なリターンを起点にポイントを先行し、勢いそのままにラブゲームでブレークに成功する。しかしサービング・フォー・ザ・セットとなった第9ゲームを落とすと、第11ゲームではもったいないミスを連発。2-5から逆転を許してセットを落とし、後がない状況に立たされる。 それでもニューヒーローは諦めなかった。第4セットは両者ともにプレーの質が上がらない中、勝負所でアルカラスがロブやパッシングショットといった難しいショットを立て続けに決めてブレークを先行。会場の声援も味方に付けながら4ゲームを連取し主導権を掌握する。ブレークバックを許した第5ゲームの終了時には脚の治療を理由にメディカルタイムアウトを取ったアルカラス。再開後も第6ゲームでブレークを奪うなど相手に流れを渡さず、2セットオールに持ち込む。

運命のファイナルセット、相手のダブルフォールトやミスをきっかけに第3ゲームでブレークを獲得したアルカラスは、続く第4ゲームで計4本のブレークポイントを握られながらも気迫のセーブ。以降はアルカラスの緩急をうまく使ったショットが奏功し、第7ゲームでは優勝を大きく手繰り寄せるブレークを果たす。

迎えたサービング・フォー・ザ・チャンピオンシップではズベレフのミスが続いたことでアルカラスが順調にポイントを重ね、最後は相手のフォアハンドがネット。4時間19分でローランギャロスの頂点に立った。
この結果、アルカラスは21歳にして早くも全サーフェス(ハード、芝、クレー)での四大大会制覇を達成。これは22歳で同記録を打ち立てたナダルを抜く史上最年少での快挙だ。決勝戦後のメディア対応では、幼い頃からの夢だった全仏制覇を成し遂げたことへの喜びをこう語った。

「どの四大大会であっても初めての優勝は常に特別なことだ。その中でも全仏オープンは、過去に優勝したスペイン人選手全員を知っていることもあり、その素晴らしいリストに自分の名前が載ることになるから信じられない。5、6歳でテニスを始めた頃から、ここで頂点に立つことを夢見てきた。本当に最高の気分だ」

6月10日に更新されたランキングでは、3位から2位に浮上したアルカラス。昨年3月以来の1位返り咲きはもちろんだが、生涯グランドスラム(キャリアで全ての四大大会を制すこと)の偉業達成も、もうすぐ手の届くところまできているのだ。まずは連覇が懸かる今季3つ目の四大大会「ウインブルドン」(7月1日~14日/イギリス・ロンドン/芝)で果たせるか注目しよう。

文●中村光佑

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