松本幸四郎、歩道橋も怖い高所恐怖症 宙乗りに「お仕事じゃなかったら絶対やらない!」

取材会に出席した市川染五郎(左)と松本幸四郎【写真:ENCOUNT編集部】

七月大歌舞伎で43年ぶりに『裏表太閤記』を再演 市川猿翁の初演をバージョンアップ

歌舞伎俳優の松本幸四郎、市川染五郎が10日、東京・中央区の歌舞伎座タワーで行われた「歌舞伎座『七月大歌舞伎』夜の部『裏表太閤記』」の取材会に出席した。7月歌舞伎座公演の夜の部で、豊臣秀吉の出世物語『太閤記』をもとにした『裏表太閤記』を上演する。

同作は、秀吉の活躍が光る“表”の物語と、その輝かしい光の陰にある秀吉のライバル・明智光秀らの悲劇的な“裏”の物語を織り交ぜている。2023年9月に亡くなった故・二世市川猿翁さん(三代目市川猿之助)が、昭和56(1981)年に初演して以来、実に43年ぶりの上演となる。初演以来、一度も上演されていない“伝説の舞台”とされている。

今回は、初演とは一部内容を変えてバージョンアップ。幸四郎が豊臣秀吉、鈴木喜多頭重成、孫悟空の三役を勤め、染五郎が鈴木孫市と宇喜多秀家の二役を勤める。親子役の喜多頭と孫市を、幸四郎と染五郎の実の親子が務める。また明智光秀を尾上松也が演じ、松本白鴎が大綿津見神役で登場する。幸四郎による宙乗りや早替り、幸四郎と松也による大滝での立廻りなど、ケレン味あふれる演出が盛り込まれている。

幸四郎は、「43年前に猿之助のおじさまが新しくお作りになったこの作品のこのスケール感を、熱さはそのままに上演したい。(あの頃に)昼夜通しで義太夫が入った新作を作ったというのが本当にとんでもないこと。そういうことを実現したことのすごさを感じました」と初演の偉大さに触れ、「そういう熱量は受け継いで、さらにすごいものになるようにしたい」と意気込んだ。また「太閤記ですので、歌舞伎の演目としては得意中の得意といわれる作品の世界。歌舞伎を見たことがある方もない方も歌舞伎をイメージできる、いわゆる“ザ・歌舞伎”という演出での作品。新作歌舞伎がたくさんある中で、今この作品をやることは意義があると思いますし、挑戦です」と語った。

幸四郎が演じる喜多頭と、染五郎が演じる孫市の親子の場面は、ストーリーを初演とは少し変えている。染五郎は、「孫市に関しては、(話を変えているので)新作ではありますけど、演出は古典。義太夫狂言のセリフのテンポやセリフまわし、そこにどういうふうに感情をのせていくか、研究してやっていきたい」と意気込んだ。

宙乗りを行う幸四郎は、19年8月歌舞伎座の『東海道中膝栗毛』や22年3月歌舞伎座『増補双級巴 石川五右衛門』などで過去に宙乗りを経験しているが、実は高所恐怖症。恐怖心について聞かれると、「これはもうお仕事だから……やる」と報道陣を笑わせた。「歩道橋もダメなんで……」と明かし、「お仕事だからこそ、高いところに行く。お仕事じゃなかったら絶対やらない! でも、お仕事なので、いくらでも飛びます」と宣言した。

この日は、衣装の扮装写真も公開に。豊臣秀吉や孫悟空などの衣装の撮影は、主演を務める『鬼平犯科帳』の撮影中に京都で行ったという。「豊臣秀吉と孫悟空ですから、鬼平のみんなもびっくりしてました。びっくりしてる人たちを、孫悟空の姿で追っかけたりしましたけど、楽しかったです」とお茶目な一面も。そんな父の様子を聞かれた染五郎は、「はい……、いいと思います」と静かに答えていた。ENCOUNT編集部

© 株式会社Creative2