鹿児島県警トップの隠ぺい…「直接進言できず。聞いてもらえないと諦め」…内部告発と保身に揺れた県警前部長、接見の弁護士に心境明かす「称賛される行動ではない」

 前鹿児島県警生活安全部長の男(60)=鹿児島市紫原5丁目=が国家公務員法(守秘義務)違反の疑いで逮捕、送検された事件を巡り、容疑者が「県警がより良い組織になってもらいたいという気持ちで行動したことにうそはない。しかし、自身の行動は称賛に値するようなものではない」と話していることが10日分かった。弁護人の永里桂太郎弁護士が接見内容を明らかにした。

 弁護人によると、容疑者は「生活安全部長という立場にありながら、野川明輝本部長に直接進言できなかった。聞いてはもらえないだろうと諦めていた」と話している。

 容疑者は内部文書を面識のない札幌市の男性記者に郵送した疑いが持たれている。中には、事件が公表されることを望んでいない女性被害者の名前も記されいて「配慮が欠けており、申し訳なく思っている」と謝罪。「捜査資料の現物を送らなければ信用されないと思った。記者は個人情報を適切に扱ってくれると思った」と弁明した。

 記者に送った理由について「ウェブメディアで県警を糾弾するような記事を書いており、積極的に取材してくれると思った」と説明。差出人を無記名としたのは「家族や将来のことを考えた」と釈明した。県警の不祥事を訴える文書などを外部に漏らしたのは今回のみで、この記者以外には送っていないとしている。

 他にも、別の警察官による不祥事を訴える文書や、捜査書類の保管方法について不適切な指示をしているように読み取れる内部資料「刑事企画課だより」なども送ったと明らかにした。

 文書には県内の女子トイレに侵入し女性を盗撮したとして枕崎署の巡査部長が逮捕された事件も含まれていた。容疑者は5日に鹿児島簡裁であった勾留理由開示手続きで「本部長が県警職員の犯罪行為を隠蔽(いんぺい)しようとした」と主張。しかし、文書には前刑事部長が指示したとの趣旨が記されており、「本部長の隠蔽を知る人はごく少数だった。送り主が自分だと分からないよう、指示した人物の名前を変えた」としている。

◇「混乱の収束を」県公安委が要請

 鹿児島県警の現職警察官や前生活安全部長が相次いで逮捕される事態を巡り、県警を管理する県公安委員会(増田吉彦委員長)は10日、野川明輝本部長に対し「混乱を一刻も早く収束させ、本来業務に支障を生じさせないよう万全を期せ」とする要請文を出した。

 県公安委は南日本新聞の取材に対し「一連の非違事案の発生は、極めて深刻な状況だと受け止めている。県民の信頼が揺らぐことに強い懸念を抱いている」と回答。事案解明に尽力し、抜本的な再発防止策を講じるよう求めたことも明らかにした。

 前生活安全部長の男(60)が逮捕、送検された事件を巡っては、「相次ぐ非違事案の再発防止に向けた対応を県警に促しているさなかに発覚し非常に残念だ。全容解明に向けた調査や捜査を適正に行ってもらいたい」とした。

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