お忘れなく(6月11日)

 落とし物は世相を映す。バブル期は宝石や貴金属が上位に入った。現代は携帯電話のバッテリー、ワイヤレスイヤホンが目立つそうだ▼これも時代の象徴か。全国の警察に届いたお金の拾得物は昨年、過去最多の228億4千万円超に上った。県内は2億3千万円で、過去10年間で最も多い。どうやらキャッシュレス決済の普及が要因らしい。スマホでの買い物が急増している。現金で支払う場面が減り、財布をどこかに置き忘れてしまうのだとか▼天気が人のうっかり度に関係しているとの説がある。気温や気圧、湿度、日照時間の変化が、意識や日常の行動に影響するという。電車内での拾得物のデータと気象条件から落とし物が増える日を予想し、全国予報をインターネットで公開している会社もある。「よく当たる」と評判は上々のようだ▼間もなく梅雨がやって来る。落とし物の「主役」はビニール傘に移る。日本洋傘振興協議会によると、拾われた分の多くは埋め立て処分されている。その数、年間推計8千万本というから、実にもったいない。注意日には、スマホからアラームを鳴らす設定なども考えたい。これもまた、世相を映す「お忘れなく」の呼びかけか。<2024.6・11>

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