カスハラ防止で推進本部 三重県知事が立ち上げ表明 県議会一般質問

【右から平畑武議員、青木謙順議員、長田隆尚議員、吉田紋華議員、山内道明議員】

 三重県議会6月定例月会議は10日、平畑武(新政みえ、2期、鈴鹿市選出)、青木謙順(自民党、6期、津市)、長田隆尚(草莽、5期、亀山市)、吉田紋華(共産党、1期、津市)、山内道明(公明党、3期、四日市市)の5議員が一般質問した。一見勝之知事は、悪質なクレームなどのカスタマーハラスメント(カスハラ)を防ぐ条例の制定に向けて検討するため、関係部局の幹部らでつくる推進本部を立ち上げると表明した。有識者で構成する懇話会も設置し、他県の対策などを聞き取る方針も示した。平畑議員への答弁。

 平畑 武議員(新政みえ)  通院費の補助対象を15歳までに引き上げるなど、子ども医療費補助金の拡充を要請。県当局は「多額の財政負担を伴うため、慎重に検討する必要がある」との認識を示した。

 【医療費】  平畑議員 県は入院費の補助対象を15歳までに拡大したが、通院費も15歳までに上げればどうか。子どもたちが安心して医療機関を受診できるようにすべき。子ども医療費無料の対象拡大に向けた県の考えは。

 松浦医療保健部長 県は昨年度から2年連続で補助対象を拡大した。補助の総額は拡大前との比較で約3億円(15%)増えた。拡充は多額の財政負担を伴うため、慎重に検討する必要がある。全国一律の制度を設けるよう、国に求める。

 【カスハラ】  平畑議員 カスハラは大きな問題。直近2年間で迷惑行為を受けた人は46.8%で、2人に1人は被害の経験があるとのアンケート調査もある。県は条例制定も視野に対応する方針だが、今後の進め方は。

 知事 お客様は神様という風潮を変えなければならない。公務員を怒鳴る人がいたりする。知事をトップとした推進本部を設置する。有識者で構成する懇話会も開く。広く知恵を集め、県が住みやすい場所になるよう対応したい。

 青木 謙順議員(自民党)  県が策定した観光振興基本計画に温泉の記述が見当たらないと指摘。情報発信などに努めるよう求めた。県当局は専門家の支援などによって温泉地の魅力向上を図ると説明した。

 【温泉】  青木議員 昨年の一般質問で、当時の観光部長は「温泉を活用した観光振興に努める」と答弁していたが、県が3月に策定した観光振興基本計画に温泉の記述はなく、写真が1枚あるだけ。どう展開していくのか。

 生川観光部長 滞在型観光コンテンツの磨き上げや旅行商品を提供する体制の構築、販売促進プロモーションなどを支援する。施設の改修や観光案内、二次交通の充実も支援する。温泉は重要な観光資源の一つ。魅力の向上や発信に努める。

 【側溝】  青木議員 除草と同じぐらい県民の要望が多いのは側溝や路肩の整備。津市だけでも昨年度、側溝の整備に関する要望が30カ所ほどあったが、実際に工事ができたのは1カ所だけだった。どう対応するのか。

 若尾県土整備部長 側溝や路肩の修繕は重要。道路利用者や住民に現地の状況を確認し、優先度の高い所から対策を実施している。緊急性の高い区間の対策を先行するなど、少しでも住民や利用者に寄り添えるように対応している。

 長田 隆尚議員(草莽)  静岡県知事選で当選したリニア中央新幹線推進派の鈴木康友氏に対する期待を尋ねた。一見知事は、鈴木知事の発言などを踏まえて「リニア開業に向けた雰囲気が変わった」と述べた。

 【リニア】  長田議員 鈴木新知事は7日、都内で開かれたリニア建設促進期成同盟会の総会で「リニアの早期全線開業に向け、同盟会を構成する都府県と一丸となって取り組む」などと発言した。鈴木新知事への期待は。

 知事 リニア開業に向けた雰囲気が、がらっと変わった。静岡県知事の交代が大きなポイント。鈴木知事は総理と面談した後の取材に「スピード感を持ってJRと対話する」と語った。これまでの静岡にない発言で、潮目が変わったと思った。

 【関西本線】  長田議員 県は昨年、JR関西本線の利用促進を目的として、通勤で実際に関西本線を利用してもらうモニター事業や関西本線の潜在需要に関する調査を実施していた。これらの結果と浮かび上がった課題は。

 長﨑地域連携・交通部長 モニターからは「始業時間に見合うダイヤがあった」との声がある一方で「バスとの接続が悪い」との回答もあった。調査では、近隣県の大学に通えることが確認されたほか、通勤や観光でも潜在需要があった。

 吉田 紋華議員(共産党)  県が大阪・関西万博のチケット代を支援するため、小中学校や高校などに実施した意向調査の結果を尋ねた。県当局は、約7割の学校が「来場予定はない」と回答したことを明らかにした。

 【万博】  吉田議員 児童生徒の校外学習に対する支援として万博のチケット代を補助する県の事業について、予算からの削除を求めたが可決された。各学校に来場の意向を調査すると聞いたが、調査の結果は。

 松下雇用経済部長 意向調査の対象とした624校のうち、7日までに538校から回答があった。このうち約30%に当たる163校が「来場予定」もしくは「検討中」、69%の375校が「来場予定はない」と回答した。

 【爆発】  吉田議員 県が万博でブースを出展する関西パビリオンは、ガス爆発が起きた場所に近い。今も複数の場所でメタンガスが出ているとの情報がある。子どもたちが近づくと、とても危ない。安全への考えは。

 福永教育長 日本国際博覧会協会が専門家の意見を踏まえて安全確保の対策を検討し、講じると聞いている。訪問する各学校は安全に万全を期して参加されると認識している。対策の徹底状況を注視し、適時、適切な対応に留意する。

 山内 道明議員(公明党)  カスハラの防止を目的に制定を検討する条例の対象に、教育現場を含むのかを尋ねた。一見知事は、モンスターペアレントの問題を踏まえて「対象になり得る」との認識を示した。

 【子ども】  山内議員 子どもたちを取り巻く環境は、いじめや虐待、不登校といった課題が多く、長期化している。大人の言動が大きく影響していることを大人が自覚すべき。その観点からもカスハラの対策は重要だと考える。

 知事 子どもはまっすぐだが、人付き合いや組織の中でみずみずしい感性を失っていく。その結果として出来上がったのが大人かもしれない。子どもは大人を見ている。大人が子どもの模範になるため、ハラスメント対策を進めたい。

 【カスハラ】  山内議員 教育現場へのカスハラは、保護者や地域による過剰な要求だけではない。学校でのカスハラ対策は、教員不足の解消や働き方改革に不可欠。県が取り組むカスハラ対策の対象に学校現場は含まれるのか。

 知事 カスハラの条例には、さまざまな対象が出てくると思う。小売業界は当然。診療所などの窓口や行政に加え、学校現場もあり得る。モンスターペアレントはエスカレートし、教員を苦しめる。教員が笑えなければ子どもも笑えない。

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