「本の楽しさ伝える」 編集者が書店オープン 青森・十和田市中心街 東京からUターン・長嶺李砂さん

店主の長嶺さん
黄色いベンチが目印の書店「TSUNDOKU BOOKS」=十和田市稲生町

 青森県十和田市の中心商店街に5月、書店「TSUNDOKU BOOKS」がオープンした。今年東京からUターンした、店主で編集者の長嶺李砂さん(40)=同市出身=が自ら編集した本や読んで良かった本、これから読みたい本が並ぶ。長嶺さんは「十和田はもっと面白くなると直感し拠点を移すことを決めた。本の楽しさを伝え、街も明るくなったらうれしい」と話す。

 長嶺さんは三本木高校卒業後、大学進学で東京へ。パティシエやライターを経て20代後半で料理本などを扱う出版社に転職して編集者の仕事をするようになり、32歳で独立した。

 転機は2021年夏。長嶺さんの父が病に倒れ、東京から同市を月1、2回ほど訪れるようになった。商店街はシャッターが閉まり寂しくなっていたが、一方で新たな動きも目についた。古い店舗を改装したカフェや飲食店などがぽつぽつとオープン。それらの店を営む魅力的な同世代の存在を知り「ここなら何かできそう」と思ったという。

 さらに22年秋に参加した東京の書店でのイベントをきっかけに、自ら書店を開きたい-と考えた。イベントを通じ編集者としてではなく、読者として純粋に本と向き合う楽しさを取り戻したという長嶺さんは「今の自分の気持ちに気づける本と出合える本屋さんの良さを感じた」という。

 店名は「積ん読」がポジティブな意味になったら面白いなと思い、名付けた。「まだ読んだことのない本が自分の本棚で待っていてくれるのは、わくわくするじゃないですか。死ぬまで読まないかもしれないけれどそれでもいい、楽しみですから」

 築55年の物件を改築した約12坪の同店には、料理本や旅の本、エッセーや青森関連の本などが千冊ほど並び、手書きのポップも添えられている。長嶺さんは編集者という仕事を軸にしながらも同店をまずは10年続けたいとし、「本好きはもちろん、本を読まない人にも本が身近な存在になってほしい。十和田で暮らす人たちの生活の楽しみになったらうれしい」と話した。

 月の後半は編集の仕事に専念するため、営業日は毎月1~15日。一日の終わりに良いことがあれば-との思いから、営業時間は午後3時から9時まで。

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