ロンドン・シリーズは「ヨーロッパへの窓口」。MLBが目指す「海外公式戦」の未来<SLUGGER>

現地6月8~9日、3回目となるロンドン・シリーズが開催された。フィリーズ対メッツのカードで行われた2連戦は、第1戦にブライス・ハーパー(フィリーズ)の同点弾&神セレブレーションあり、第2戦はメッツの捕手ルイス・トーレンスの頭脳的なダブルプレーありと見どころ満載。計11万人近くを動員し、今回も大盛況のうちに終わった。

ロンドン・シリーズが初めて開催されたのは2019年。6月29~30日にヤンキース対レッドソックスという黄金カードで行われ、2日間で計12万人近い観客を動員。コロナ禍を経て、昨年6月に4年ぶりに行われた第2回ではカブス対カーディナルスが対決した。今回のメッツ対フィリーズも含め、アメリカ国内でも人気を誇るチームばかりを送り込んでいることからも、MLBの気合の入りようが分かる。

ロンドン進出の背景には、同じ北米4大スポーツのNFL(07年から毎年ロンドンで公式戦を行っている)やNBA(11年から19年までに公式戦を開催していた)が先んじて進出していたことに対抗した面もあっただろう。だがそれ以上に、イギリスだけでなく欧州全体への進出の足掛かりとしたいという思惑が強い。そのことは、ロブ・マンフレッド・コミッショナーの「ヨーロッパへの窓口」という表現からもうかがい知れる。

周知のように、ヨーロッパは長く″野球不毛の地”とされてきた。MLBは1996年のメキシコを皮切りに海外での公式戦をスタートさせたが、00年に日本、01年にプエルトリコ、14年にはオーストラリアと、野球がある程度浸透している地域ばかりだった。

しかし、18年にWBSCヨーロッパ(世界野球&ソフトボール・ヨーロッパ連盟)が発足するなど、欧州でも徐々にではあるがベースボールが芽吹きつつあった。未開拓だからこそ今後の成長が期待できると見込んだMLBは、まずは比較的MLBに親しんでいたイギリス(MLBの視聴率やグッズ売り上げは欧州No.1だった)を橋頭保にすることを決めた。そして、その成功を足掛かりにして欧州全体への進出を目論んでいるのだ。

25年にパリで公式戦を開催する計画は残念ながら頓挫したものの、マンフレッド・コミッショナーは「いずれはドイツやイタリアでの公式戦開催も模索している」と、さらなる欧州進出に意欲的な姿勢を示している。そのために、レギュラーシーズンを154試合程度に削減し、海外での試合をさらに増やしたいとすら考えているともいう。まだ当分先の話になるだろうが、いつかベースボールもサッカーのような世界的スポーツの地位を獲得する日が来るかもしれない。

構成●SLUGGER編集部

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