「経済的に余裕のある暮らし」を実現している家庭は、全国にどれだけ存在する?

経済的なゆとりと見通しが持てない人が63.2%

令和5年に内閣府が実施した「社会意識に関する世論調査」にて、「経済的なゆとりと見通しが持てる」と回答した人は4.0%、「経済的なゆとりと見通しが持てない」と回答した人は63.2%という結果が発表されました。また、「悪い方向に向かっている分野」として、物価や景気、経済力を挙げる人が多く見られました。

「経済的なゆとり」を感じていない人が半分以上を占めていますが、実際に日本人は経済的に余裕がない状態なのでしょうか。

平均給与と支出

国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、令和4年分の給与所得者1人あたりの平均給与は458万円でした。実際の手取り額は年収の7~8割といわれているため、日本人の平均手取り額は年間320~366万円程度、1ヶ月あたり26~30万円程度となります。

総務省による「家計調査報告」によると、令和5年の消費支出は1世帯あたり1ヶ月平均24万7322円、2人以上の世帯で29万3997円、単身世帯で16万7620円でした。

総世帯のうち勤労者世帯の実収入は、1世帯あたり1ヶ月平均52万2334円、単身世帯の場合35万7913円となっています。実収入とは、世帯員全員の現金収入を合計した、いわゆる税込み収入です。

数字上は総世帯、単身世帯ともに、平均支出よりも平均収入のほうが上回っていますが、経済的に余裕のある暮らしを実現している家庭は多いのでしょうか。

家庭の赤字状況

総務省統計局の「家庭の生活実態及び生活意識に関する調査」では、毎月の家計の状況に関する調査結果が報告されています。

令和4年の調査では、1万世帯のうち2290世帯(約23%)が「まったく赤字にならない」と回答しています。一方、「ほとんど赤字にならない」は3027世帯(約30%)、「ときどき赤字になる」は3203世帯(約32%)、「ほぼ毎日赤字になる」は1406世帯(約14%)という結果でした。

「赤字になる」と回答した家庭は、全体の約76%を占めます。平均収入と平均支出の差からは多くの家庭が余裕のある暮らしをしているように見えますが、実際は赤字になる家庭が多くを占めているのです。

このように、平均値で算出した数値とは異なり、赤字になる家庭は多くあります。また、その約5分の1は「ほぼ赤字になる」という家庭であるのが現状です。

都道府県別の経済的豊かさ

近年「経済的な豊かさ=賃金の高さ」といった単純な金額での比較から、意識が転換され始めています。

国土交通省は「企業等の東京一極集中に関する懇談会」の参考資料として、経済的な豊かさを指標とした都道府県別のランキングを発表しました。このランキングは、中央世帯(各都道府県の可処分所得上位40~60%)に対して調査を行い、可処分所得から基礎支出を引いた差額で比較したものです。可処分所得とは、税金や社会保険料などを除いた自由に使える手取り収入を指します。

その結果、1位は三重県、2位は富山県、3位は茨城県でした。一方、ワースト1位は沖縄県、2位は青森県、3位は長崎県となりました。この指標で分かる大きな特徴が、東京都は可処分所得が全世帯平均で3位・中央世帯では12位に入るものの、基礎支出が1位となるため結果的に42位となっている点です。

さらに、費用換算した通勤時間を差し引くと、東京都が最下位となったのです。このことから、東京都の中間層にあたる世帯は、他の地域と比べて経済的に豊かではないと考えられます。

余裕のある暮らしをしている家庭は地方に多い可能性がある

消費支出は、1世帯あたり1ヶ月平均24万7322円です。それ以上の収入があれば余裕のある暮らしができると思われがちですが、実際に余裕のある暮らしをしている家庭はごくわずかであることが分かりました。

都市部では支出が多くなる傾向があるため、地方のほうが経済的余裕を持っている家庭の割合が高い可能性があります。近年注目されている地方へ移住する家庭の増加にも、拍車が掛かりそうです。

出典

内閣府 社会意識に関する世論調査
国税庁 令和4年分民間給与実態統計調査―調査結果報告―
総務省 家計調査報告〔家計収支編〕2023年(令和5年)平均結果の概要
総務省統計局 家庭の生活実態及び生活意識に関する調査
国土交通省 都道府県別の経済的豊かさ(可処分所得と基礎支出)
国土交通省 企業等の東京一極集中に関する懇談会とりまとめ(参考資料)

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
ファイナンシャルプランナー

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