弘前大・上條信彦教授らのグループ、英専門誌の考古学賞受賞 日本人初 7300年前の鹿児島の大噴火調査

 弘前大学人文社会科学部の上條信彦教授(考古学)ら8人の国際研究グループの論文が、世界の考古学界で最も権威ある英専門誌アンティクィティが贈る「ベン・カーレン賞」を受賞した。日本人の受賞は初。7300年前に海底で極めて大規模な噴火を起こした鬼界カルデラ火山(鹿児島県)が、近くの同県種子島に及ぼした影響を突き止めた。

 上條教授らの国際研究グループは日本の大学などから4人、北欧の大学の研究者4人で構成する「CALDERA(カルデラ)」。メンバーがさまざまな分析手法で調べ論文にまとめた。

 鬼界カルデラ火山の噴火は、富士山最後の大規模噴火・宝永噴火(1707年)の約240倍の規模とされる。

 グループは鬼界カルデラ火山噴火の発生地に近く、200カ所以上の縄文遺跡がある種子島に焦点を当てた。遺跡や遺物、土器・石器を分析した。種子島には海底から噴出した火山灰が降り注ぎ、約200年は無人となったことや、その後に人が戻り異なる生活様式となったことを明らかにした。

 縄文時代の食料加工を専門とする上條教授は2022年から種子島に足を運び、出土した石器を分析した。

 すり石という石器は噴火前、多様な植物をつぶす用途の跡が見られた一方、噴火後は釣り針を作ることなどに使われるようになり、魚を食べるようになったことがうかがえるという。

 上條教授は「災害に遭いながら復興を繰り返した人類の痕跡を研究する手法が国際的に評価されたことは非常にうれしい」と話した。

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