【初夏のガーデニング】梅雨時を彩るアイリスの仲間たち8選 雨に似合う多年草も

古くから親しまれてきたアヤメをはじめ、アイリス(アヤメ)属には多くの仲間があります。凛とした佇まいに気品があり、またゴージャスな園芸品種も多彩です。多くは初夏、梅雨時に咲く丈夫な多年草なので、もっと魅力を生かして楽しみたいものです。

★梅雨入り前後にすること★

和でも洋でも楽しめる、主役になる花

アイリス(アヤメ)属は世界の温帯地域に約150種の原種があり、日本にも7種が自生しています。アヤメはもちろん、カキツバタもハナショウブもアイリスの仲間。長くシュッと伸びる剣葉に王冠のような不思議な花形が特徴です。

ここで間違いやすいのが、5月の端午の節句で菖蒲湯(しょうぶゆ)に用いる剣葉のショウブ。これは肉穂花序(にくすいかじょ)という花弁のない花を咲かせ、アイリスとはまるで異なるショウブ属の植物です。漢字で菖蒲と書いてアヤメと読んだり、ハナショウブはアイリス属だったりするので、紛らわしいですね! この際、違いを覚えておきましょう。

アイリスの仲間同士も花や草姿が似ていて、じつはちょっと覚えにくいかもしれません。でも、花茎がしっかりして華やかな花を咲かせる点で、いずれも初夏の庭やベランダで主役になる花々。凛としてゴージャスな雰囲気は和風の庭でも洋風でも楽しめます。

それから、アイリスの仲間にはカキツバタのように湿地を好むものがあり、また涼やかな水辺の観賞を目的に開花期のみ「菖蒲田」を演出することがあります。でも、多くの種類は畑地などの乾燥地で栽培可能。それぞれに適した環境を確認の上、初夏の風に揺れる花、梅雨の雨にも似合う佇まいを庭に取り入れてはいかがでしょう。

主役になるアイリスの仲間8選

明るい草地に生え、網目模様が特徴 アヤメ

開花期:5月
草丈:30~60㎝
「いずれアヤメかカキツバタ」と、優れていて優劣がつけにくいものの例えにされる花です。アヤメは下花弁に黄色や白色の地に紫色の網目(あやめ)が入るのが、見分けるポイント。葉の幅が10~15㎜で、明るく乾いた草地に自生します。地植えする場合はやや盛り土にして、水はけよく育てましょう。

湿地に群生して、花弁の元に白い筋 カキツバタ

開花期:5~6月
草丈:50~80㎝
ややとがった花弁の元に白い筋が細長く入ります。葉の幅が20~40㎜と広いのも特徴。古く「万葉集」にもうたわれ、江戸時代前半には多くの園芸品種が誕生していた古典園芸植物です。アイリス属のなかで最も水を好む湿生植物で、深さ5~15㎝ほどの水を張った容器で栽培、月に一度くらい水替えします。

花弁の元が黄色い、華やかな園芸品種 ハナショウブ

開花期:6~7月
草丈:40~80㎝
原種のノハナショウブから江戸時代に誕生した園芸品種です。各地で育種された品種のなかには室内園芸用まであります。花弁元に入る黄色がほかのアイリスと見分けるポイント、葉の幅は13~30㎜です。菖蒲園では開花期に栽培地に水を張ることがありますが、水生植物ではなくて一般の庭や鉢で育てられます。開花期だけ水につけるのはOK。

DNA解析で仲間になった変わり種 ヒオウギ

開花期:8月ごろ
草丈:60~120㎝
線形の葉が扇状に重なることが名前の由来。花径5~6㎝のオレンジ色の花に赤い斑点が入ります。アイリスの仲間としては変わった花ですが、DNA解析によってヒオウギ属から変更されました。日本の山野や海岸沿いなどに自生するため、乾燥にも強く丈夫な多年草です。

中国から古く渡来して里山で野生化 シャガ

開花期:4~5月
草丈:30~60㎝
学名はイリス・ジャポニカ(Iris japonica)ですが、古くに中国から渡来して、日本各地の人里や人手の入った山林で大株になっています。光沢のある葉が厚く、やや湿った林床を明るくする白地の花を開花。とても丈夫な常緑の多年草で、日陰にも耐えますが、花数は減ります。

鮮やかな黄花が水辺を彩る キショウブ

開花期:5月
草丈:50~120㎝
明るい黄色の花は美しく、花弁中央に筋模様が入ります。明治時代にヨーロッパから導入された薬草ですが、繁殖力が強いため、栽培する場合は外部に流出させないように気をつけましょう。株元が少し水につかるか湿った状態の用土で栽培。冬は地上部が消えますが、春にはまた芽を出します。

シャープな草姿に豪華な花 ダッチアイリス

開花期:4~5月
草丈:40~80㎝
アヤメやカキツバタに似た花ですが、オランダで古くから改良されてきた球根植物です。ジャーマンアイリスに比べると少し小ぶりながら、シャープな印象で凛とした佇まいが好まれます。湿った場所は苦手なので、日なたの乾き気味の場所に秋に球根を植えつけましょう。

花色豊富でゴージャスな大輪 ジャーマンアイリス

開花期:4~6月
草丈:50~100㎝
ダッチアイリスと同じ球根タイプで、ドイツで改良された多彩な園芸品種があります。香りの強い品種も多く、花弁の元にあるブラシ状の突起が特徴。ゴージャスで存在感のある花ですが、終わりがけに傷みがやや目立ちます。水はけのよい日なたに植えっぱなしで、手がかかりません。

多彩な仲間ごとの特徴を理解しよう!

アイリスの仲間は花弁の元にあらわれる微妙な模様で見分けるほど、よく似ています。ところが、乾いた場所を好むものから水中で育つものまで性質は多様です。それぞれの性質を理解すれば、いずれも比較的丈夫で育てやすい多年草。初心者向きです。

1花が終わったら花がらを取り除いて次々に咲かせましょう。花のない時期もスッとのびた剣葉が、庭のアクセントになります。傷んだ葉は無理に切り取らずに、抜きやすくなるのを待ちます。

芽出しの2~3月と休眠する前の10~12月に緩効性肥料を与えます。肥料の与えすぎは株を傷めますので要注意。放っておくくらいで大丈夫です。雨の日にも似合うアイリスを楽しんでみてはいかがでしょう。


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