ガーナのそのこ(6月12日)

 豊かな国で暮らす「ぼく」が、アフリカのガーナにいる一人の子どもの姿を思い浮かべる。ぼくが学校で教科書を読んでいる時、そのこはしゃがんで地面を見つめている。風呂を出てふとんにもぐり込む時には、床にごろんと横になる―▼詩人谷川俊太郎さんの「そのこ」では、2人の異なる境遇が語られる。〈ぼくはしってる ぼくがともだちとあそんでいるとき そのこがひとりではたらいているのを〉。仕事場はチョコレートの原料となるカカオの生産現場という▼現実の世界でも、多くの子どもが大人に交じって働くことを余儀なくされている。その数はアフリカやアジアを中心に世界で約1億6千万人。かのカール・マルクスは歴史的著書「資本論」で、英国の工場で働く子女の惨状を嘆いた。150年以上もたつというのに事態はさほど変わらないのか▼詩は結ぶ。〈そのこのみらいのためになにができるか だれかぼくにおしえてほしい〉。極東の豊かな国の福島から、問いの答えを考えてみる。チョコレートを口に含めば、ほろ苦い。きょう12日は「児童労働反対世界デー」。なのに誰も答えをくれないまま、そのこはきょうも休まず、きっと働いている。<2024.6・12>

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