長崎県内里親制度 登録は増加傾向も委託率伸び悩み 受け皿拡大に力を

里親の体験談などが紹介された出前講座=県庁

 予期しない妊娠や死別、虐待などの理由で実親と暮らせない子どもを育てる里親制度。長崎県によると、今年3月末現在、県内21市町で里親登録をしているのは計211世帯(速報値)で増加傾向にある。一方、家庭的な環境で育てる里親などへの委託率は伸び悩み、受け皿拡大に向け、関係機関は登録里親のさらなる確保に力を入れる。
 総務省行政評価局が7日に公表した調査結果によると、社会的養護が必要な子どもは2021年度末の時点で全国に約4万2千人。このうち、里親や少人数の子どもを育てる「ファミリーホーム」で養育されている子どもは2割程度で、登録世帯の約7割が受け入れをしていなかった。里親側の希望と子どもの年齢といった条件が合わないことなどが理由という。
 県によると、県内では今年3月末の時点で約480人(速報値)が実親と暮らせず、このうち80人が里親・ファミリーホームで生活。委託率は20%に届かず、21年度末の全国平均23.5%を下回っている。
 委託率の伸び悩みについて、里親支援機関の一つ、社会福祉法人「光と緑の園乳児院」の三浦奈利子・里親支援専門相談員は「里親制度はあくまで子どものための制度」と強調。委託率だけにとらわれず、子どもにとって最善のマッチングを増やすことが望ましいとする。「1人の子どもに対し、複数の里親を候補にできる環境が必要。まずは多くの人に制度を知ってほしい」と話す。
 「県里親育成センターすくすく」は10日、県庁で里親体験者が経験を語る「出前講座」を実施。8年前に2歳の女児を迎え入れ、その後、養子縁組を結んだ大村市の阿部千賀子さん(49)が、受け入れまでの苦労や不安、成長の喜びなどを紹介した。
 現在は夫と高校1年の実子の長男と家族4人で、サッカー観戦のために全国を飛び回るなど充実した日々を送る阿部さん。保育園や学校、近隣住民ら周囲の支援に感謝を述べ「一緒に笑ったり、泣いたり、かけがえのない時間が本当に幸せ」と締めくくった。
 出前講座は本年度中に、オンラインも含め全21市町で開く予定。問い合わせは同センター(電0957.53.7343)。

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