とっくに準備OK

 〈夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫若(も)しくは妻の氏(うじ)を称し、又(また)は各自の婚姻前の氏を称するものとする〉-堅苦しい法律の条文で書き始めるのはどうかな、と考えたが、ここは法律用語が軽やかに飛び交う朝の連続テレビ小説にあやかって▲「氏」は名字のこと。結婚したら夫の姓か妻の姓か各自の婚姻前の姓を…。「選択的夫婦別姓制度」に関する規定だ。法務省のホームページで見つけた“幻”の民法改正案▲改姓による不便や不利益を訴える声の広がりを背景に、国の法制審議会が同制度の導入を最初に答申したのは1996年の2月。法務省は96年と2010年に改正案を用意している▲ところが、改正案はお蔵入りのままだ。〈国民各層にさまざまな意見があることから、いずれも国会に提出するには至りませんでした〉…法務官僚の悔しげな顔が経過説明の行間に浮かんで見える気がするのは「虎に翼」の見過ぎか▲経団連が制度の早期実現を求める提言を発表した。〈一刻も早く改正法案を提出し、国会で建設的な議論を〉-その準備は何年も前からOK▲別姓が全ての夫婦に強制されるわけではない。当事者の好みに応じて選べるだけなのだ。なのに強固な反対を続ける「各層のさまざまな意見」。提言は変化を促す一石となるだろうか。(智)

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