「快速」が「普通」表示になる “各駅停車区間” JR神戸線『西明石』~『姫路』を探訪

JR神戸線を走る快速列車、ですが、『明石』以西の表示は「普通」に

■羽川英樹の出発進行!

今回はJR神戸線の中でも東播磨エリアにあたる『西明石』~『姫路』間をじっくり探訪してきました。この区間、明石や姫路に行ったことはあっても、それ以外の駅で筆者は普段なかなか降りる機会がありません。はたして沿線各駅はどんなところで、周辺には何があるのか……『西明石』から西に進みながら探訪してきました。

【動画】鉄アナが実況レポート! JR神戸線『西明石』~『姫路』を進む!

まずは新幹線とも接続する『西明石』。列車基地もあるため、京都からの各駅停車はこの駅で折り返します。私が今回乗車したのは野洲発網干行の快速列車なのですが、ひと駅手前の『明石』からは「快速」が「普通」という表示に変わり、これより各駅に停まっていきます。そして滋賀県の『草津』からずっと続いた複々線もこの『西明石』で終了。ここからは通常の複線となります。

次の駅は『大久保』。中央本線の新宿の次、秋田の奥羽本線、近鉄京都線にも同名の駅がありますね……。実はここ、“大出世”の駅なんです。普段は新快速も停まらない駅ですが、なんと2021年から通勤特急「らくラクはりま」の停車駅になっています。なぜここに特急が停まるのか? その理由がわかりました。

まず駅南口は、駅ビル商業施設の「ビエラ大久保」1番街と直結。ここから大型ショッピングモールの「イオン明石ショッピングセンター」がぐっと伸びています。そして駅前の神戸製鋼の跡地には「オーズタウン」という大規模マンション群が広がります。さらに、北口も含め、大久保駅界隈は、いま、明石市内でも人気のエリアの1つ。そういった理由などもあって、多くの利用が見込まれる朝夕の通勤時間帯に通勤特急を停車させているのです。

『大久保』~『魚住』間に広がる田園地帯には、新幹線の車両基地と新駅が計画されていましたが、コロナ禍以降、この話は凍結されているようですね……。

『土山』は播磨町や稲美町への玄関口になる、こちらも利用客の多い駅です。この駅からはかつて別府鉄道土山線が走っており、別府港との4.1キロメートルを結んでいました。別府鉄道は、アグリ事業や化学品事業などを展開する多木化学(本社:加古川市)の肥料を運ぶ貨物輸送が主で、旅客輸送にはおもちゃのような客車が使用されました。1984年で廃線となりましたが、その後、有志たちによって車両の保存活動が懸命に行われ、静態保存されています。

『東加古川』を出ると高架区間に入り、新快速停車駅の『加古川』へ。大阪方面からの快速列車の半分はこの駅どまりとなります。ここからは西脇市・谷川方面へ向かう加古川線が出ており、いまは稀少な103系がグリーン塗装で走っています。

また1984年までは加古川~高砂港の8キロメートルを結んだ国鉄高砂線が走っていました。貨物輸送が中心なので、客車は主に2両編成で日中は2時間おきくらいの運行でした。

人口27万人の東播磨の中核都市・加古川市。駅前には老舗デパート「ヤマトヤシキ」が健在。戦後の繊維産業をけん引した日本毛織の巨大工場跡は大型ショッピングセンター「ニッケパークタウン」となって市民に親しまれています。そしてもちろん名物の「かつめし」は外せません。

『加古川』を出るとすぐに全長410メートルのトラス橋で兵庫一の長さを誇る加古川を渡り、『宝殿』(ほうでん)に到着。ここは高砂市の玄関口となる駅で、かつてはニッケや住友セメントへの専用線も敷かれていました。駅名の由来となったのは、生石(おうしこ)神社にある御神体「石の宝殿」なんです。こちら、水に浮かんでいるように見える高さ5.7メートル、幅6.5メートル、重さ500トンの巨石から成り立っています。でも、いまだに誰が何のためにというのが判明していないミステリアスな巨石。触れば、何かご利益が得られそうなんです。

かつては「阿弥陀」を駅名に名乗っていた『曽根』。ホームが大きく右にカーブしており、姫路の有名進学校である白陵中学校・高校の最寄り駅にもなっています。

『ひめじ別所』は姫路貨物場の横に2005年に誕生した駅。駅前の駐車場が24時間でも250円という安さにびっくりです。

次は難読駅名『御着』(ごちゃく)。かつてここには御着城があり、播磨守護の赤松氏の家臣・小寺氏の居城でした。現在、本丸跡は公園や公民館、そして市役所の出張所になっています。

『東姫路』は2016年開業と、このエリアでは最も新しい駅。利用客はさほど多くはありませんが、736床を持つ「はりま姫路総合医療センター」の最寄り駅にもなります。

さあ、列車は『姫路』に到着です。私の乗った列車はこのあと『英賀保』、『はりま勝原』を経て、『網干』まで走っていきます。姫路駅ホーム上にある、まねき食品の「駅そば」は、和風だしに中華麺という、まさに姫路のソウルフード。また駅前の商業施設に入る回転焼きでおなじみ「御座候」(ござそうろう)の担々麺の店も人気で、担々麺390円・ジャンボ餃子(3個)290円はイマドキうれしいですね。

この姫路からは播磨新宮方面への姫新線、いまなお元気にワインレッドの103系が走る播但線、山陽本線を西に向かう黄色い普通列車たち、そして元町・梅田方面に向かう山陽電車など、いろんな路線にも出会うことができる、鉄のワンダーランドなんです。

ぜひ一度、東播磨の沿線各駅をのんびり乗り降りしてみてください。(羽川英樹)

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