優秀な人材をSNSで発掘!「X」をエグゼクティブ・サーチに活用する方法【人材紹介のプロが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

まだ表に出ていない潜在的な人材を掘り起こす方法としてSNSを活用する方法があります。今回は東京エグゼクティブ・サーチの代表取締役社長・福留拓人氏が、優秀な人材を獲得するために実践しているという「X」の活用法について解説します。

「X」(旧ツイッター)を利用したエグゼクティブ・サーチ

私どもは、50年前から常に顕在層ではなく潜在している優秀層を探し当てることに心血を注いできました。そのなかでは人材を探し出すツールも、時代に合わせて刻々と変化してきました。ここではそうした私どものテクニカルな取り組みをひとつご紹介しようと思います。

そのツールはみなさまもよくご存じの「X」(旧ツイッター)です。すでに広く普及しているSNSの「X」ですが、実は私どもTESCOのなかでは最近になって非常に熱いツールになってきています。エグゼクティブ・サーチというマーケットにとって人材の宝庫と言っても過言ではありません。

この「X」には140字の文字数制限という特徴があります。また匿名性や個人情報保護にもこだわりがあります。しかしTwitterの時代にはFacebookなどのSNSに圧倒されて「面白みがない」と言われ、下火になった時期がありました。

ところが2016年のアメリカ大統領選でドナルド・トランプ氏が選挙戦術に活用してから勢いを取り戻してきました。その後「X」になってからは付随する機能も強化されており、特に若い世代に支持されて完全復活を果たした感があります。

ひと頃のSNSは個人が日常的に利用する傾向が強く、みずからの承認のもとに個人情報を公開する場所になっていました。そのせいでそうしたSNSが私どものサーチの主戦場になりかけたのですが、最近の若い世代はFacebookに代表されるようなSNSをあまり積極的に使用していないように思います。

形式的にアカウントを持っていたとしても使っているのはメッセンジャーの機能にとどまり、投稿を眺めることはあっても、自分から積極的に投稿する機会は減っているのではないでしょうか。

それはなぜかと考えると、SNSに投稿するメリットよりもデメリットを感じている人が多いせいかもしれません。たとえば職場などで面倒な人間関係を抱えているとすれば、SNSで日々の行動を監視されることがないように投稿を控えている人も多いでしょう。容易に個人情報が割り出せるSNSはできるだけ遠ざけるというトレンドを私どもは感じています。

その点、「X」は自分の個人情報をほとんど伏せることができます。それでいて投稿である程度の承認欲求を満たされる面があります。この時代に生きる者として鬱積した感情を発散したい時には格好のツールになるでしょう。ということで個人情報が守られる、気軽に使えるということで、予想以上に若い人が「X」に流れているようなのです。

ネタを明らかにしてしまえば何ということもないのですが、「X」で誰かがつぶやいた投稿は手軽に検索できます。ですからTESCOがターゲットとして定めた人材の職種、経験、実績などをキーワード検索で拾い出し、出てきた投稿のみならず前後の投稿をくまなくチェックし、この人材が私どもの探す当該領域に何らかの関係性があるかないか、仮説を立てて慎重に判断します。

そして丁重なダイレクトメッセージをお送りして、そのアカウントの人物に接触するということを試してみたところ、意外にもこれまで接触のできていなかったかたにアプローチできる可能性が高いことがわかりました。

Xを活用することで「潜在」の掘り起こしが可能になる

事例を挙げてみましょう。「X」で(生産技術自動車)と検索してみます。ヒットした投稿からこの職種に従事しているのが確実だと思える人の発言を読むと「普段は自動車の設計をしている」とつぶやいています。その前後を読むと教科書の受け売りではなく、自分で意見を書いていることがわかります。時には「残業が何時間あった」という愚痴のような書き込みもあり、本人が書いていることに間違いないと判断できます。

このように検索で出てきた投稿で実際に従事しているであろう人物に接触する方法も有効です。これが特殊なキーワードだとマニアックに話が弾むこともあります。もしサーチ案件となった場合、最後はプロフェッショナルのTESCOが話をまとめます。これが「X」をエグゼクティブ・サーチに活用する方法です。

もうひとつ「X」で私が個人的に注目していることがあります。140文字という限られた文字数のなかで的確に自分の思いを言葉にできるというのは、能力を推し量るにあたって非常に読み取りやすいということです。短い文章にはその人のセンスが現れます。場合によってはインテリジェンスを推し量ることもできると思います。

もちろん「X」のアカウントを持っているからといって、すべてが何らかの意図を持って出てくるわけではありません。ダイレクトメッセージへのレスポンスが必ずしもすごく高いとは限らないのですが、私どももセンスを持ち合わせた丁重な文章を送りますので、先方も興味を持ってくれて、好意的な反応をしてくれることも多いのです。

これはまさに「潜在」の掘り起こしと言えるでしょう。目的のためにそこに現れてつぶやく人もいれば、何もなくとも潜在層へのアプローチを深めることで、他の「メディアに出てきていない潜在層」に独自の接触もできます。

これを手間暇のコストが掛かりすぎるから無駄だと考えるか、人が面倒がってやらないからこそ自分たちがやってみるのか、私どものようなゲリラ戦を得意とするエグゼクティブ・サーチとして価値があるのか、これについては評価がわかれるかもしれませんが、こうしたユニークな取り組みについても実践しているところです。

ほんの一例ではありますがエグゼクティブ・サーチという業務は、こうした時代に合わせたアプローチ手法を研究していくものだと思っています。

余談ですが私の「X」はあるテレビゲームのモチーフをアカウントにしていてエグゼクティブ・サーチとはまったく関係のない存在にしています。みなさまも遊び心を織り交ぜながら「X」をビジネスツールとして活用してみてはいかがでしょうか。

福留 拓人
東京エグゼクティブ・サーチ株式会社

代表取締役社長

© 株式会社幻冬舎ゴールドオンライン