今村翔吾さん、新刊への思い語る 元寇テーマ「戦争の恐ろしさ書きたかった」 佐賀市で講演 佐賀之書店「命の限り支える」

新刊の歴史小説「海を破る者」について語る今村翔吾さん。サプライズで誕生日ケーキも贈られた=佐賀市のJR佐賀駅構内「サガハツスクエア」

 直木賞作家の今村翔吾さん(39)が9日、歴史小説「海を破る者」の発売を記念して佐賀市内で講演した。元寇がテーマの新作について、今村さんは「750年前、福岡で行われた戦争に佐賀の御家人が駆り出された。戦争の恐ろしさを書きたかった」と話し、オーナーを務めるJR佐賀駅内の「佐賀之書店」への思いも語った。

 今作は伊予(現在の愛媛県)の御家人が主人公。「倒した敵に対して『家に帰ったら良き夫、父親だったのでは』と思う場面がある。当たり前のことを忘れさせる戦争の恐ろしさ、モンゴル帝国がなぜこれほど広がったかを書きたかった」と執筆の動機を紹介した。当時のモンゴルは、現代の覇権主義国家にも通じるとの見方も示した。

 昨年12月にオープンした佐賀之書店については「すごくいい感じ。命の続く限り支えていこうと思う」と手応えを口にした。まちの書店がなくなると困るのは年配と思っていたが、「実は小中学生だったと佐賀で教えられた」。コンビニで買ったプリペイドカードで、本をネット注文する手間がかかっていたことを知ったという。

 40歳の誕生日が目前で、サプライズでケーキが贈られた。「45歳になったら坂本龍馬を書こうと思っている。大河ドラマを目指し、司馬遼太郎先生に挑みたい」と抱負を語った。「出版界を未来につなぎたい。8月ぐらいに佐賀に恩返し(の企画)を考えている」とも述べた。(大田浩司)

新刊にサインをして参加者と交流した今村さん(左)=佐賀市のJR佐賀駅構内「サガハツスクエア」

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