サクランボ「双子果」多く 福島県内、23年夏猛暑影響...規格外に

二つの実が一体になった「双子果」

 甘酸っぱい初夏の味覚、サクランボが旬を迎えた。ただ、今年の生産現場には異変が見られる。花芽ができる時期の昨年夏が高温だった影響で、二つの実が一体となった「双子果(ふたごか)」が例年より多くなっているためだ。双子果は規格外のため出荷できず、生産者からは「温暖化が進めば双子果が年々増えてしまうのではないか」と生育環境の悪化を懸念する声が上がっている。

 「今まではレアな(珍しい)印象だったが、今年はぱっと見て双子果が目立つ。例年の倍以上ですかね」。福島市飯坂町でサクランボを栽培する日下部真(まこと)さん(47)は、収穫期を迎えたサクランボを見てため息をつく。

 かつて二本松市の工場で働いていた日下部さんは音楽仲間の農業の仕事を手伝ったことがきっかけで、この道に入った。2010年から約10アールの畑でサクランボの主力品種「佐藤錦」や「高砂」「紅秀峰」を育てているが、これだけ双子果がなった年は初めてという。日下部さんは「双子果も味は同じ。『面白い形の双子果をあえて入れてくれ』という友人もいるが、やはり箱詰めした際に粒がそろっていないと...」と嘆き、温暖化に伴う双子果の増加を心配した。

 約12アールのハウスでサクランボを生産する伊達市霊山町の菅野農園の菅野崇明さん(33)も今年は双子果の増加を実感する。凍霜害に遭った昨年に比べて今年の収量は増加傾向にある一方、「紅さやか」の収穫時に双子果が例年より2割ほど多かったという。菅野さんは「上向きに咲く花や日光に直接当たっていた部分の双子果が多かった」と話す。

 双子果を含む規格外の果物については、道の駅や地域の直売所で「訳あり品」として格安で販売せざるを得ない状況だ。夏から秋にかけてモモやリンゴの収穫も控えており、菅野さんは「気温の上昇などでモモの生育が早くなったり、リンゴが日焼けしたりするのではないか」と不安げな表情を浮かべた。

 遮光で対策検討

 JA全農福島やJAふくしま未来によると、今年はサクランボの双子果が4月下旬から確認され、例年に比べて発生状況は「やや多い」という。ただ、実の付きは良く、収穫量は平年並みを見込めるため、関係者は個人贈答用や出荷量に大きな影響はないとみている。

 今後の取り組みについて、JAふくしま未来の担当者は「天候への対策を取るのは難しいが、遮光方法などできることを検討していきたい」と説明した。

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 双子果 二つの実がくっついた状態で生育したサクランボ。詳しい原因は分かっていないが、前年の夏(7~8月ごろ)の気温が影響している。猛暑により花芽の生育が異常に進み、雌しべが2本に分かれた花が咲き、受粉したことで発生するとみられる。食味は規格品と変わらないが、規格外のため出荷できない。

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