【向羽黒山城跡】DC契機に魅力発信(6月13日)

 近年の城ブームを背景に、会津美里町の国指定史跡・向羽黒山城跡を訪れる観光客が増えている。2026(令和8)年には大型観光企画「ディスティネーションキャンペーン(DC)」が本県で繰り広げられる。DCを追い風に日本最大級の山城の魅力を県内外に発信し、会津観光の柱の一つとして定着させたい。

 向羽黒山城跡は、戦国時代に会津を治めた芦名盛氏が築いた山城で、2001(平成13)年に国史跡に指定された。最近までの調査と史跡整備で、数多くの土塁や堀、虎口(出入り口)などが良好な状態で残されていることが確認され、研究者からは「日本最大級の山城」としてお墨付きを得ている。ただ、山城目当てに訪れる観光客が目立つようになったのは、2017年に日本城郭協会の「続日本100名城」に選定され、公式ガイドブックに掲載されるようになってからで、新型コロナ禍を挟んでまだ日が浅い。

 町観光協会は2021年から、史跡を訪れた記念となる「御城印」を販売している。初年度の販売枚数2200枚に対し、昨年度は2680枚を売り上げた。今年1月から4月にかけて月刊誌「歴史街道」(PHP研究所)で史跡が紹介され、今年度は4月と5月の2カ月だけで906枚(前年同期比45%増)に上っており、今後も多くの城ファンの来訪が期待される。

 城跡は会津茶事発祥の地とされ、毎年5月下旬に「ふれあい茶会」が催されてきた。新型コロナ禍で中止を余儀なくされ、昨年、「日本最大級 向羽黒山城まつり」として名称を新たに4年ぶりに復活した。今年は「仮想会津征伐模擬合戦」と銘打った対戦形式のゲームなども催され、昨年の1.5倍の1500人が訪れた。まつりは、4月から6月までのDC期間中と重なる。キャンペーンで提供する企画として磨きをかけ、誘客につなげるべきだ。

 県外への一層の情報発信も欠かせない。町は、山城のある自治体でつくる全国山城サミット連絡協議会に加盟申請した。11月に島根県益田市で開かれるサミットにPRブースを出展する。遅過ぎた感は否めないが、会津が誇る山城の魅力を広く売り込む機会となる。アフターDCを見据え、サミットの誘致にも結び付けてほしい。(紺野正人)

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