タワマン購入後に修繕積立金が値上げ…拒否できる? 専門家「見切りをつけるなら今」

タワーマンション(写真はイメージ)【写真:写真AC】

「修繕積立金を月額5000円くらい値上げしたいという通知が届いてしまって…」

国土交通省が公表している「平成30年度 マンション総合調査結果」によると、タワーマンション(20階建て以上)の修繕積立金の平均値は1戸あたり毎月1万2305円。マンション全体の平均値(毎月1万1060円)よりもやや高めだが、ランニングコストが高いと買い手がつかないため、分譲時は1万円~1万2000円と少し安く設定されている物件も多いという。

そのため修繕積立金だけでは足りず、一時金の徴収や金融機関から借り入れを行ったマンションが21%存在していると、2021年9月に国土交通省が改訂した「マンションの修繕積立金に関するガイドライン」には書かれている。築10~20年頃ごろには月2~3万円の修繕積立金を徴収される物件もあるといい、値上がりは住人にとって頭の痛い問題となっている。

今まさに、そうした問題をリアルに抱えているのは、東京都市部のタワマンに住む田部井成実さん(仮名・45歳)。コロナ禍に入る1年ほど前に現在のタワマンを購入。複数の飲食店を都心で経営する夫のたっての願いでタワマンへの転居を決めたが、コロナ禍により事業を縮小せざるを得なくなり、現在は成実さんがフルタイムで働くことでどうにか家計を保っているという。

「お恥ずかしい話ですが、我が家の現状としては、夫婦の貯金を切り崩してなんとかギリギリ家計を回せているかな? という状況にあります。まさかコロナ禍で夫の仕事が傾くとは……。もっと安い家を買っておけばよかったと思わなくもないですが、今さら言っても遅いですよね。ただ、このところの物価高のあおりをうけ、修繕積立金を月額5000円くらい値上げしたいっていう通知が管理組合から届いてしまって……」

年間6万円もの値上げは、間違いなく家計の破綻を意味すると成実さんは話す。

「値上げ分を拒否することは、できませんか?」

修繕積立金は高騰の一途、売却も選択肢の1つに

今回もアドバイスをくれたのは中目黒「コレカライフ不動産」の姉帯裕樹さん。20年以上に渡って都心の不動産事情を見届けてきたその道のプロだ。

「タワマンだけではないのですが、管理費や修繕積立金を安く見積もっておいて、後から値上げするというのは、いわゆる“不動産あるある”です。デベロッパー側からしてみれば、高いお金をかけて土地を取得しマンションを建てた以上、売れ残っては困るもの。飴とムチではないですが、ランニングコストが安い点をうたって、とりあえず買わせちゃうわけなんですよ。

でも、タワーマンションは通常のマンションに比べて修繕費用が高額になるもの。間違いなく足りなくなるので、修繕積立金で1万円台前半で提示しているところは、確実に後から値上げされると思っていたほうがいいでしょう」

では、値上げされた金額を拒否することはできるのだろうか。

「修繕積立金を値上げする際は、総会が開かれ、住人の決議を取ることが必要なのですが、その際に『反対票』を投じることはできます。しかし、修繕積立金の値上げが承認されてしまったら、支払いを拒否することはできません。

もしも現状で家計がギリギリだというのであれば、ご主人にとっては不本意かもしれませんが、不動産価格が全体的に上がっている今のうちに売りに出し、ランニングコストの良いマンションに転居するのも1つの手。タワマンの修繕費用は、人件費の高騰などもあり今後も値上がりすると考えられます。見切りをつけるなら今のうちだと思いますよ」

□姉帯裕樹(あねたい・ひろき)「株式会社ジュネクス」代表取締役。宅地建物取引士の資格を持ち、不動産取り扱い経験は20年以上を数える。独立した現在は目黒区中目黒で不動産の賃貸、売買、管理を扱う「コレカライフ不動産」として営業中。趣味はおいしいラーメンの食べ歩き。和栗恵

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