フェデラーがジョコビッチとの関係性を告白。当初「ノバクに敬意を払っていなかった」のが「怪物のような選手になった」<SMASH>

来る6月20日、動画配信大手の「アマゾンプライムビデオ」は2022年9月の「レーバー・カップ」で栄光のキャリアに別れを告げた男子テニスの元王者ロジャー・フェデラー氏(スイス/42歳)の現役最後の12日間を追った『FEDERER: Twelve Final Days』を配信する。その中でフェデラー氏は長年しのぎを削ってきたノバク・ジョコビッチ(現3位/37歳)との関係性に言及。当初はジョコビッチに対して十分な敬意を払っていなかったと明かした。

ツアーで50度も対戦した両者。最終的にフェデラー氏は23勝27敗と負け越し、うち5度顔を合わせた四大大会決勝でも全てジョコビッチに敗れた。しかしフェデラー氏は初め、ジョコビッチが今ほどの実力を身に付けるとは思っていなかったという。自身より6歳年下のジョコビッチのプレーに多くの欠陥があったことが理由だ。

「06年に彼とモンテカルロで初めて対戦した時(フェデラー氏が6-3、2-6、6-3で勝利)、私はコートを後にしながら『彼との対決は今後も問題なさそうだ』と思った。彼に対しては多少の期待はあったけど、私は100%彼が活躍する確信はなかった。彼の技術的な欠陥から、私はノバクにふさわしい敬意を払っていなかったと思う。ノバクはフォアハンドのグリップが極端だったし、バックハンドも今ほど滑らかではなかった」

ツアーでの経験を積むうちに著しい成長を遂げたジョコビッチ。今では四大大会史上最多の24度の優勝、世界1位在位も男女ツアーで最長の428週というとてつもない功績を残しており、マスターズ1000シリーズの全9大会で優勝した唯一の選手にもなった。「彼はそれらの欠陥を非常にうまく解決し、怪物のような選手になった」とフェデラー氏は素直に賛辞を送る。
ところが“ビッグ3”の中で最年少のジョコビッチは様々な理由からファンの支持を得られなかった。その1つに、フェデラー氏は自身とラファエル・ナダル(スペイン/元1位/38歳)の間で築かれた最高のライバル関係に風穴を開けようとしていたジョコビッチが、邪魔者のようにみなされたためだと考えている。

「彼は私とラファのファンの盛り上がりを壊す選手だったのだと思う。ファンは私とラファに愛情を注いでいたから、ノバクが台頭した時、多くの人が『3人目は要らない。ロジャーとラファで満足だ』と言っていたのだろう。私のファンは最初、ノバクをあまり好きではなかった。そんな中でノバクは強い個性と、どんな犠牲を払ってでも勝ちたいという気概で躍進を遂げた。ノバク自身も(自分に冷たい)ファンとの関係性に刺激を受けたと思う。その凄まじい集中力が、一部の人々を怖がらせたのかもしれない」

最後にはジョコビッチが何かと批判を浴びている事実を踏まえ、「彼は少々誤解されている」と述べたフェデラー氏。「メディアを通して、最終的に彼がどんな人間なのかがわかる。彼の試合から、彼は何者でどんな価値観を持っているかもわかってくる。彼が家族をとても大切に思っていることも知っている」と締めくくった。

文●中村光佑

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