行政処分中なのに? 東京都マチアプ事業を「東武トップツアーズ」が8000万円で落札の怪

AIマッチングアプリの開発なのに…東京都のHPより

東京都が近く本格実施する「マッチングアプリ」が話題だ。この『TOKYOふたりSTORY AIマッチングシステム』は、東京都内に在住、在勤、在学している18歳以上の独身者対象。相手探しには自分や相手からの申し込みのほか、AIからの紹介もあるという。

都は合計特殊出生率が全国最低の0.99ということもあり、少子化対策として打ち出されたわけだが、自治体提供だけあってアプリの会員登録には、名前や生年月日、最終学歴、年収、独身証明書やマイナンバーカードなどの本人確認書類、誓約書も提出させ、安全な出会いをウリにしている。

しかし、原資は税金。都は婚活事業に2年で5億円の予算をかけている。税金でやることなのかは賛否があるが、それ以前に『TOKYOふたりSTORY AIマッチングシステム』事業の受注者に都民や国民からは疑問の声が出ている。

アプリ事業については、東京都財務局が「結婚支援マッチング事業支援業務委託」として募集。大手旅行会社「東武トップツアーズ」が今年3月15日に8165万円で落札している。

一般競争入札だったが、入札者は同社を含めて2社でいずれも大手旅行会社だった。

SNSでは《旅行業界と癒着か》《なんでそんな所に頼むんですか?》などの声も出ているが、旅行業界といえばコロナ禍でガバナンス不全が露呈。談合や過大請求など不正や疑惑を残したのは記憶に新しいからだろう。

そもそもアプリ開発や運営も含めた事業であればIT企業やコンサルタント会社などが入札していても不思議ではないが……。

■経緯を担当者に聞いたら…

なぜ、マッチングアプリ事業を「旅行会社」が受託したのか?「旅行会社」が受注にふさわしい事業なのか。事業を管轄する東京都生活文化スポーツ局の担当者に聞いたところ……。

「委託している『結婚支援マッチング事業』は、AIマッチングアプリの提供、交流イベントの実施、WEBによる婚活相談であり、入札資格の営業種目は『企画立案支援』が対象となります」と書面で回答。

東武トップツアーズは、婚活事業やアプリ開発の実績が群を抜いているわけでもない。結局、同社は婚活事業会社のタメニー(旧パートナーエージェント)にAIによるマッチングの提供や利用者へのWEB個別相談の業務委託をしている。

ちなみに東武トップツアーズは、5月30日に公正取引委員会が、青森市が発注した新型コロナ患者の療養施設への移送業務の入札で談合を繰り返したとして、排除措置命令を出した大手旅行会社4社のうちの1社。

今月5日には青森市から9カ月の指名停止処分を受けている。

同社は、観光庁からも今年3月25日付で「下限割れ」の運賃で貸し切りバスを手配したなどとして、9~14日間の業務停止の行政処分を下されていた。

そもそも旅行会社の水増し請求事件は1年前から問題になっていた。受託先については事前に調査は行っていたのかについても担当者に尋ねたが、「東武トップツアーズは、5月31日に東京都において指名停止となりました。本契約に関しては、それ以前に契約している業務であり、業務を引き続き実施することに問題はありません」とのことだった。

同社への決め手や「旅行会社」のみが入札した理由、受注の経緯については回答がなかった。

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