渡辺監督代行就任後も低空飛行...最下位独走のライオンズ、課題の貧打解消へ向けての「4つのトレード案」<SLUGGER>

西武ライオンズが苦しんでいる。5月26日に松井稼頭央監督が休養、渡辺久信GMを監督代行に据える荒療治に出たが、その後も4勝10敗と浮上のきっかけをつかめないまま。そこで、低迷の最大の原因である得点力不足解消へ向け、4つのトレード補強案を考えてみた。

①浜屋将太←→神里和毅(DeNA)

2019年に123試合に出場して規定打席にも達し、打率.279とまずまず活躍した神里は、20年も169打数で.308だったが、その後は3年続けて1割台。ドラフト1位で度会隆輝が入団、筒香嘉智もアメリカから帰ってきて、左打ちの外野手が増えたこともあり、チーム内での立ち位置は微妙になっている。西武としては大きな犠牲を払わず獲得できそうだ。

交換要員候補に挙げた浜屋は、19年ドラフト2位で入団しながら、22年以降一軍での登板機会がない。それでも今季は二軍で9試合に登板して52.0回で防御率2.25。環境が変われば、左のリリーフ要員として活躍できる可能性はあるはずだ。②若林楽人←→宮本丈(ヤクルト)

ヤクルトは正中堅手の塩見泰隆が怪我で長期離脱中。ベテランの西川遥輝が代役を務めているが、外野手は補充しておきたい。若林は塩見と同じ俊足の右打者で、今季3本塁打を放っているようにパンチ力も備える。岸潤一郎、長谷川信哉らライバルの多い西武にいるより、ヤクルトの方が出番も増えると思われる。

一方、宮本は20年以降毎年60試合以上に出場している堅実な控えで、二塁を守れる点もプラス。一軍では今季出場8試合のみだが、二軍では打率.296/出塁率.377と上々の数字を残している。選球眼が良く、現状の西武の主力とは異なるタイプの打者だけに、働き場所は十分ありそうだ。

③渡部健人←→中村奨成(広島)

正直言って、上記2件は実現しても戦力は大幅には向上しないだろう。だがこのトレードは、即効性はなくとも長期的に大きなプラスをもたらす可能性を秘める。17年夏の甲子園で大会新6本塁打を放った中村は同年ドラフト1位で広島に入団するも、捕手の層の厚さに加え、私生活上の問題もあってたびたび放出候補に挙げられている。昨年も二軍で打率.323をマークした素質が花開くには、地元の広島を離れることが必要ではないか。 一方、広島は12日終了時点でチーム本塁打数がたった26本とパワー不足が悩みの種。末包昇大以外に一発の怖さがある打者に乏しく、渡部の長打力は魅力的に映るに違いない。今季は一軍で24打数1安打、11三振とさっぱりでも、21年には二軍で19本塁打。ポテンシャルは十分あり、カープは一塁が固定できていないのでチャンスもあるはず。伸び悩むドラフト1位同士の交換は、双方に好結果となるかもしれない。

④ 平良海馬←→野村佑希(日本ハム)

シーズン中にこれだけの規模のトレードが同一リーグの球団間で実現する可能性は極めて低い。だが、本気で西武がチームを変えたいのであれば、このくらい思い切った動きが必要ではないか。昨年も125試合に出て13本塁打を放った野村は、日本ハム再建の柱の一人と見られていた。

しかし本職の三塁は清宮幸太郎、次いで郡司裕也に奪われ、左翼に回る機会が多くなっていたが、ここも水谷瞬に取って代わられ出番が激減している。花咲徳栄高出身の準地元選手でもあり、西武としては是非欲しいはず。とはいえ今年でまだ24歳、ある程度実績もある選手ので、獲得するにはそれなりの見返りが必要になる。 そこで浮上するのが平良だ。もちろん、現時点では平良がずっと格上。リリーフから先発に回った昨年も11勝、リーグ4位の防御率2.40を記録した投手を放出するなど、普通はあり得ない。だが、平良はポスティングシステムを利用してのメジャーリーグ移籍希望を公言している。ポスティングは選手ではなく球団の権利だから、西武は平良の言いなりになる必要はないが、チームに長居するつもりがない選手は市場価値が高いうちにトレードしてしまうのも一つの手だ。

日本ハムはポスティングに積極的なので、平良が活躍して優勝でもした日には、たとえ1~2年の在籍期間でも容認する可能性はある。現在は故障中の平良が復帰してバリバリ投げられることを証明すれば、今季中は無理でも、オフに成立する余地はなくはないだろう。

文●出野哲也

【著者プロフィール】
いでの・てつや。1970年生まれ。『スラッガー』で「ダークサイドMLB――“裏歴史の主人公たち”」を連載中。NBA専門誌『ダンクシュート』にも寄稿。著書に『メジャー・リーグ球団史』『プロ野球ドラフト総検証1965-』(いずれも言視舎)。

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